数年前、日本のバラエティ界に一大旋風を巻き起こした「お笑い第七世代」。2010年代後半に台頭した若手芸人の総称であり、霜降り明星を筆頭に、ハナコ、EXIT、四千頭身といった面々が、テレビを席巻する勢いで活躍を見せました。しかし、近年この「第七世代」という括りを目にすることが少なくなり、ブームは一瞬で過ぎ去ったかのように感じられます。一体なぜ、これほど注目されたブームは短期間で終わりを迎えてしまったのでしょうか。元テレビ局スタッフの視点から、その背景と芸人たちの現在地を深掘りします。
テレビ業界と相思相愛だった「第七世代」の強み
「お笑い第七世代」には、前述のグループに加え、宮下草薙、かが屋、ぺこぱ、ゆりやんレトリィバァなどが含まれていました。彼らに共通していたのは、ネタに対して真摯に向き合う姿勢です。実際に、霜降り明星は「M-1グランプリ」、ハナコは「キングオブコント」、ゆりやんレトリィバァは「女芸人No.1決定戦 THE W」と「R-1グランプリ」で優勝を飾り、その実力を結果として証明しました。このような真面目で優等生的な芸風は、コンプライアンス意識が高まっていた当時のテレビ業界が求めていたものと見事に合致したのです。また、テレビ関係者にとって、彼らの起用は同世代の若年層視聴者の獲得に直結するという大きなメリットがありました。各番組が積極的に「お笑い第七世代」の芸人を起用したことで、彼らの知名度は一気に全国へと広まりました。
ブームの終焉:第七世代芸人たちの現在地と個別の軌跡
しかし、このブームは長くは続きませんでした。それぞれの芸人の現在地には、明確な明暗が分かれています。文句なしの売れっ子として、現在も第一線で活躍を続けるのは霜降り明星とハナコでしょう。彼らはともにフジテレビ系『新しいカギ』のメインキャストを務めるなど、その人気を揺るぎないものにしています。
次点でぺこぱが挙げられます。ネタを披露する機会は減ったものの、レギュラー番組を持ち、企業の発表会やイベントでの仕事も途切れません。また、かが屋は、世間的なブレイクとは異なる道を歩みながらも、本業のコントにおいては熱狂的なファン層を確立し、ライブで十分に生計を立てられるほどになっています。ゆりやんレトリィバァは独自の立ち位置を確立しました。Netflixの大ヒットドラマ『極悪女王』で演技力を高く評価され、現在は拠点をアメリカに移し、世界進出という大きな目標を掲げています。彼女は「お笑い第七世代」の中でも、常に話題の中心にいる存在です。一方、EXITはレギュラー番組こそあるものの、かつて「第七世代」を牽引したコンビとしては、やや寂しい状況にあると言わざるを得ません。
人気が大きく低迷してしまったのは、四千頭身と宮下草薙です。特に四千頭身の中心人物である後藤拓実は、2023年上旬の時点で仕事が激減し、フジテレビ系『ぽかぽか』で給料が家賃を下回ったことを告白しました。現在も「仕事がないキャラ」として活動を続けており、トリオとしての露出は日本テレビ系『有吉の壁』やラジオ番組など限定的で、再浮上の見込みは薄い状況です。宮下草薙も同様に失速しました。ネガティブキャラで一時は人気を博した草薙航基でしたが、そのキャラクターに視聴者が飽き始めたのか、徐々にテレビから姿を消していきました。
人気が低迷したお笑いトリオ四千頭身のメンバー3人が並ぶ様子
「お笑い第七世代」ブームは、瞬く間に全国を駆け巡り、若手芸人の新たな可能性を示しました。しかし、その熱狂が冷めた後、個々の芸人たちはそれぞれの才能と努力、そして時代の変化への適応力によって、異なるキャリアを歩んでいます。このブームが残した光と影は、エンターテインメント業界における一過性の流行と、その先にある真のサバイバルを物語っています。
参考文献
- Yahoo!ニュース (2025年8月1日). 「ブームは消滅?お笑い第七世代の「明暗」を元テレビ局スタッフが解説「四千頭身は仕事がなく…」」. https://news.yahoo.co.jp/articles/dc1c51383b4d8fd2b93a85a728cdb2009f3afb20