高市早苗政権発足時のNHK報道番組「ニュース7」で用いられた「斜めの画角」が、インターネット上で大きな論争を巻き起こしている。この特殊なカメラアングルが、視聴者に新政権の不安定さを意図的に植え付けようとしたのではないかとの批判が相次ぎ、公共放送としてのNHKの報道姿勢が問われる事態となっている。
「意図的な不安定さ」か、それとも「一般的な撮影手法」か?
問題視された放送は、高市政権発足翌日の10月22日夜に放映された。具体的には、(1)新閣僚と共に赤絨毯の階段を降りる高市首相の記念撮影シーン、(2)高市首相の就任会見、(3)国会議事堂の映像の三場面で「斜めの画角」が多用された。この映像に対し、X(旧Twitter)では「視聴者に不安や緊張感を与えるためのダッチアングルと呼ばれる手法を多用している」との批判が拡散され、高市氏の支持者を中心に「公共放送にあるまじき行為だ」との非難が数万件もリポストされる異例の状況となった。
高市早苗新首相、NHKニュース7の報道姿勢巡る論争の中心に
この騒動を受け、産経新聞の取材に対しNHKは「画角を斜めに傾ける手法は、ズームやパーンなどの撮影手法の一つとして、これまでも様々なニュースで使用しています」「映像を見た人に不安感や否定的イメージを抱かせるという意図はありません」と、意図的な使用を明確に否定した。NHKの記者も「絶対に意図なんかありません」と困惑を示し、「毎回やっていることなのに、なぜと戸惑っています。かっこいい映像を使っているつもりだった」と局内の認識を説明している。
テレビ業界のプロが見る「斜め画角」の真実
一方、民放の報道番組プロデューサーはNHKに同情的な見方を示している。彼は、斜めの画角はカメラマンが多様なパターンを撮影する中で自然と生まれるものであり、編集担当者は視聴者が飽きないよう、様々な映像を組み込む一環として使用しているに過ぎないと指摘する。「ずっと正面打ちの映像だとつまらないので、視聴者が飽きないよう、色々なパターンの映像を組み込んでいるだけ」との見解だ。
このプロデューサーは自身も長年テレビ業界に身を置いてきたが、「ダッチアングル」という専門用語や、「不安を煽る」といった効果について、今回の騒動で初めて知ったと明かしている。「そもそも我々の仕事は報道なので、素材に印象を加えるという発想がありません」と述べ、未成年被疑者へのモザイク処理など、リスク回避のための加工はあっても、映像に特定の印象操作を意図的に加えることはないと強調した。
今回の「斜め画角」を巡る論争は、報道の映像表現に対する解釈と視聴者の受け止め方の違いを明確にした。NHKが意図的な演出を否定し、業界の専門家も一般的な撮影手法と見なす中、一部視聴者には政治的意図が読み取られた。公共放送の情報発信における影響力と、その表現に対する社会的な視線の厳しさを改めて示す出来事となった。
参考文献:





