NHK特集「未解決事件」積水ハウス地面師詐欺:主犯からの手紙と仮登記の謎

NHKの「未解決事件」シリーズで、不動産大手の積水ハウスが約55億円もの巨額詐欺被害に遭った地面師事件が再び注目を集めています。この複雑な詐欺事件を巡っては、ノンフィクション作家の森功氏のもとに、主犯格と目されるカミンスカス操氏から13通に及ぶ手紙が送られていたことが明らかになっています。これらの手紙には、事件の核心に触れる驚くべき内容が含まれており、今回は特に積水ハウスが直面した「仮登記無効」という謎めいた通知の背景に迫ります。

積水ハウスを揺るがした「仮登記無効」の内容証明郵便

積水ハウスの海喜館事件における数々の謎の中でも、特に疑問を呼ぶ出来事の一つが、同社が地面師グループと仮契約を結んだ直後に届いた内容証明郵便の存在です。積水ハウスが地主のなりすまし役である羽毛田正美、そして中間業者であるイクタHDと海喜館の売買に関する仮契約を締結した後、わずか2週間後の2017年5月10日以降、立て続けに4通の内容証明郵便が本社に送付されました。

積水ハウスが2018年1月24日付で発表した調査報告書によれば、その郵便には次のような内容が記されていたといいます。「私は本件不動産の所有者だが、仮登記がなされ驚いている。売買契約はしていないから、仮登記は無効であるので抹消せよ」。差出人名義は、本物の地主である海老澤佐妃子氏、住所はまさに海喜館そのものでした。この通知は、積水ハウスの関係者を大きな混乱に陥れることになります。

積水ハウスの困惑と地面師グループの偽装工作

内容証明郵便の到着に慌てた積水ハウスの営業担当者や事業開発室の幹部らは、事態の確認のため、主犯格のカミンスカス操氏や中間業者の生田氏らと緊急で面談しました。積水ハウスの2020年12月7日付検証報告書によると、生田氏はその際、「海老澤は沖縄旅行に出かけており、通知書は内縁の夫役であった常世田が痴話げんかから嫌がらせで送ったものだ」と説明したとされています。

しかし、この説明は虚偽であり、常世田氏の仕業などではなかったことは後に判明します。積水ハウス側は、内容の真偽を確かめるため、カミンスカス氏と生田氏に対し、5月19日に海喜館での内覧会を実施し、本物の地主とされる海老澤氏(実際はなりすまし役の羽毛田氏)との面談を強く要求しました。この一連の動きは、地面師グループによる巧妙な偽装工作がいかに積水ハウスを翻弄したかを物語っています。

積水ハウス地面師事件の主犯格、カミンスカス操の姿積水ハウス地面師事件の主犯格、カミンスカス操の姿

謎を深める「本物の地主」の状況と意外な相続人

一方、当時末期がんで入院中だった本物の地主、海老澤佐妃子氏は、この内容証明郵便を送るような状況にはありませんでした。彼女は翌月6月24日に病院で息を引き取っています。では、一体誰が積水ハウスにこれらの通知を送ったのでしょうか。

驚くべきことに、海老澤佐妃子氏には、出奔した実父が残した異母兄弟が2人存在していたのです。そして、この2人の異母兄弟こそが、積水ハウスへ内容証明郵便を送付した真の差出人でした。つまり、天涯孤独と思われていた海喜館の地主には、正式な遺産相続人がいたことになります。さらに事態を複雑にしているのは、この地面師グループも相続人の存在を事前に知っていたという事実です。この予期せぬ相続人の出現は、積水ハウス地面師事件の全容解明を一層困難なものにしています。

この遺産相続を巡る詳細な経緯や、それが地面師グループの計画にどのように影響を与えたのかについては、続報でさらに深く掘り下げていく予定です。


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