物価高騰が続く現代において、日々の生活必需品の選択は家計に直結する重要な課題です。中でも、毎日使うトイレットペーパーの「シングル」と「ダブル」では、一体どちらが経済的なのか、一度は疑問に感じたことがある方も多いのではないでしょうか。この素朴な疑問に対し、「エリエール」ブランドで知られる大手製紙メーカー、大王製紙への取材で得られた情報を基に、その実態を深掘りします。
「シングル」と「ダブル」、その基本的な違いとは?
薬局やスーパーの陳列棚には、シングル、ダブル、さらには2倍巻きや芯なしといった多様なトイレットペーパーが並び、どれを選べば良いか迷うことも少なくありません。まず、シングルとダブルの基本的な特性から見ていきましょう。
大王製紙の担当者によると、シングルは一枚でダブルと同程度の強度を保つ必要があるため、一枚あたりの繊維密度が高く、破れにくいのが特徴です。一方、ダブルは名前の通り二枚重ねで製造されており、シングルに比べて厚みがあり、ふんわりとした柔らかさと高い吸水性が魅力とされています。
また、注目すべきはその長さです。一般的に、シングルはダブルの約2倍の長さがあります。大王製紙の代表商品「エリエール」を例にとると、シングルは1ロールあたり55メートル、ダブルは30メートルと、明確な違いが見られます。しかし、価格を見てみると、同一ブランドの商品であればシングルもダブルも同じ価格で販売されていることがほとんどです。このため、「単純に考えれば、約2倍の長さがあるシングルの方が断然お得なのでは?」という疑問が浮上します。
トイレットペーパーのシングルとダブルを比較検討する様子。節約術として注目される日用品。
「お得度」の真相:使用期間は意外と変わらない?
では、実際にシングルとダブル、どちらがよりお得なのでしょうか。この点について、大王製紙の担当者は興味深い見解を示しています。仮に一度に使用する長さが同じだった場合、確かにロールが長いシングルの方が節約につながる可能性があります。しかし、ダブルは柔らかく吸水性に優れているため、一回あたりの使用量が短く済むという側面があります。
大王製紙「エリエール」の調査結果によれば、1ロールを使い切るまでの期間は、シングルでもダブルでもほぼ変わらないという結論が出ています。これはつまり、「シングルを1回で使用する長さ」を約2で割ったものが「ダブルを1回で使用する長さ」にほぼ等しいということを意味します。私たちが無意識のうちに、シングルの場合は多めに巻き取り、ダブルの場合は少なめに済ませているのかもしれません。手に取った際に安心感のある厚みになるまでカラカラと巻く、という行為が、結果的に使用量の調整につながっているのです。
結論:選択は個人の感覚に委ねられる
トイレットペーパーのシングルとダブル、どちらがお得かという長年の疑問に対する答えは、意外にも「使い方によって実質的な差は少ない」というものでした。見た目の長さや価格だけでは判断できない、消費者の無意識の行動が影響していることが大王製紙の調査から明らかになりました。結局のところ、経済的な視点だけでなく、肌触りの好みや使い勝手の良さといった個人の感覚が、トイレットペーパー選びの最終的な決め手となるでしょう。
参考文献:
- 大王製紙株式会社「エリエール」ブランド担当者への取材情報に基づく