ウクライナ侵攻による西側企業の撤退が続くロシアにおいて、米ファストフード大手マクドナルドの後継店「フクースナ・イ・トーチカ(おいしい。それだけ)」が、日本の世界的キャラクター「ハローキティ」を冠した限定バーガーを発売し、大きな話題を呼んでいる。制裁下で日本を「非友好国」と名指しするロシアで、日本の「カワイイ」文化が若者から支持されるこの現象は、国際関係と文化の複雑な交錯を示唆している。
ロシアで話題のピンクバーガー
夏季限定で登場した「ハローキティ・バーガー」は、その奇抜なピンク色のパンとチーズソースが特徴で、ソーシャルメディア(SNS)上で瞬く間に拡散された。多くのユーザーがその見た目に驚きや興味を示し、投稿が相次いでいる。このバーガーの企画には、キャラクターのライセンス事業を継続するロシア企業が関与したと見られている。昨年も、サンリオキャラクターの小物がハローキティ誕生50周年記念のおまけとして提供されるなど、継続的なコラボレーションが見られる。
ロシアの「フクースナ・イ・トーチカ」店舗外観、ハローキティの装飾が施された注文用タッチパネルが見える。
「かわいい」が繋ぐ異例の現象
モスクワの旗艦店は客でごった返し、注文用タッチパネルには「かわいいでしょう?」という日本語と共に、ハローキティの耳やリボンの装飾が施されている。店内外では、親子連れなどがバーガーを頬張る姿が見られた。「フクースナ・イ・トーチカ」運営会社のダリヤ・ナザルキナ上級副社長は声明で、ハローキティが「日本の夏」のムードにぴったりだと説明。ピンク色のパンについては、「日出ずる国の文化からインスピレーションを得たもので、単なる色ではなく、桜の開花やアニメの美学の象徴」であると述べ、日本の文化への敬意を示している。この一見矛盾するような現象は、政治的対立と国民間の文化交流の間に存在する複雑な関係性を浮き彫りにしている。
安全性への言及と今後の注目点
「ハローキティ・バーガー」の人気は、国営メディアも無視できないほどだ。タス通信は、検査機関の話として、使用されている着色料が「天然(昆虫)由来で、ロシアや欧米で認可済み」であると報じ、食品安全性の懸念を払拭しようと試みている。しかし、食材に厳しい制限があるイスラム教徒らに対しては注意を促している。このバーガーの登場は、制裁下におけるロシア市場の動向、そして「カワイイ」文化が持つ世界的な影響力を再認識させる事例と言えるだろう。政治的緊張が高まる中でも、文化的なつながりが予期せぬ形で現れる現象として、引き続きその動向が注目される。
参考文献
- 時事通信. (2025年8月4日). ロシアに「ハローキティ・バーガー」―「カワイイ」文化、皮肉な人気. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/9eb4c2c7815b34a0705045d7b1cd040edd890de0