NATO事務総長、ロシアの急速な軍備増強に「5年以内」の攻撃警告と防衛力強化を訴え

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナを支援する国々に対し核ミサイルの使用をちらつかせつつも、西側諸国との直接的な武力衝突は第三次世界大戦に発展しかねないと警告を発する中、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は、急速に再軍備を進めるロシアとの全面戦争を回避するためには、ジェット戦闘機やミサイル、武装ドローン(無人機)の迅速な増強が不可欠であると加盟国に強く働きかけています。ロシアの戦時武装拡大を研究する学者たちは、プーチン大統領が新たな兵器開発を通じてウクライナの同盟国に恐怖を与え、ロシアの支配から逃れた国々の再征服やソビエト連邦の再建という基本計画を断念させる狙いがあると分析しています。

NATO事務総長マルク・ルッテが、ロシアの軍備増強と欧州の防衛力強化について演説する様子。NATO事務総長マルク・ルッテが、ロシアの軍備増強と欧州の防衛力強化について演説する様子。

ロシアの驚異的な軍事生産力と侵攻計画

英ロンドンの王立国際問題研究所で演説したルッテ事務総長は、「ロシアのせいで欧州に戦争が戻ってきた」と警告し、プーチン大統領による領土拡張主義の高まる危険性について詳細に述べました。その中で同事務総長は、ロシアが北朝鮮やイランなどの国々と手を組んで軍事力を強化している現状を指摘。「プーチン大統領の軍事機構は減速するどころか加速している。ロシアは軍を再編しつつあり、われわれが考えていたよりも速いペースで兵器を製造している。弾薬に関して言えば、ロシアはNATO全体が1年間で製造する量をわずか3カ月で製造している」と続けました。

ロシアの首都モスクワで急成長している軍需工場は今年、核搭載可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデル」200発と戦車1500台を製造する予定です。ルッテ事務総長は語気を強め、「ロシアは5年以内にNATOに対して軍事力を行使しようと準備している。5年以内にだ!」と強い危機感を表明しました。

防衛力強化の緊急性と具体的な施策

ルッテ事務総長は、ナチスドイツの軍備増強に追いつくため、英国のウィンストン・チャーチル元首相が兵器製造の拡大に着手するよう英下院に呼びかけた演説を引用し、欧州が防衛力を強化するのに一刻の遅れも許されないと訴えました。「防空とミサイル防衛を4倍に強化する必要がある。われわれはロシアがウクライナの上空からテロを仕掛ける様子を目の当たりにしてきた。今こそ、われわれは領空を守る盾を強化しなければならない」と同事務総長は強調しました。

さらに、NATO加盟国は空軍の近代化、ミサイル迎撃システムや戦車、ロケット弾の増強、そして海軍の強化も必要になると指摘。これに向けた第一歩として、NATO加盟国は米国からF35戦闘機700機を取得する予定だと述べ、具体的な防衛力強化のロードマップを示しました。

新世代兵器とサイバー防衛への投資

ルッテ事務総長は、ウクライナの戦場におけるドローンの効果に言及し、「わずか400ドル(約6万円)のドローンが200万ドル(約3億円)もするロシアの戦車を破壊している」と述べました。この事例を挙げ、NATO加盟国は新世代のドローンやミサイルシステムの備蓄を開始し、宇宙技術やサイバー戦争に関する専門知識への投資を強化すると宣言。現代戦における技術革新の重要性を訴えました。

まとめ

ルッテ事務総長は、「平和を守るためには戦争に備えなければならないことを、われわれは歴史から学んできた」という力強い言葉で演説を締めくくりました。各加盟国が国内総生産(GDP)の5%を国防費に充てることでNATO全体が強化されれば、ロシアがNATO諸国を攻撃しようとはしなくなり、同機構の集団防衛の盾が将来にわたって10億人の市民を守ることになるだろうと結び、現在の脅威に対する明確な行動と投資が平和維持の鍵であることを示唆しました。

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