【香港=藤本欣也】香港で大規模な反政府デモが起きてから9日で半年を迎えた。「逃亡犯条例」改正案の撤回や林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官の引責辞任を求めていた反政府デモはその後、政府を背後で操る中国共産党への抵抗運動に発展した。8日の大規模デモを経て抗議活動はどこに向かい、中国当局はどう対応するのか。
「昨日の疆蔵(きょうぞう)」「今日の香港」「明日の台湾」-。
8日のデモ行進で掲げられていたのぼりである。「中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区やチベット地方で起きた問題は、香港で起きつつあり、台湾でもこれから起きうる」といった意味だ。
中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正問題に端を発した反政府デモが今や、“香港のウイグル化”にNOを突きつける反中運動でもあることを示していた。
6月9日に主催者発表で100万人参加のデモが起きた当初、批判の矛先は林鄭氏に向けられていた。しかし7月21日にデモ隊が中国政府の出先機関を包囲してから反中色が強まり、抗議活動は中国への抵抗運動の色彩を帯びていく。
スローガンも「香港人、頑張れ!」から「抵抗せよ!」に変わっていった。
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デモ参加者は「和理非(平和、理性、非暴力)派」と「勇武(武闘)派」に大別される。
和理非派と勇武派の要求は、(1)「逃亡犯条例」改正案の完全撤回(2)警察の暴力に関する独立調査委員会の設置(3)行政長官選における普通選挙導入-などの「5大要求」全ての実現だ。
これまで和理非派が大規模デモを組織する一方で、勇武派が親政府・親中系の商店襲撃や、主要道路の封鎖などを繰り返し、警官隊と激しく衝突。和戦両面で政府への圧力を強め、(1)の譲歩を勝ち取った。
11月に入ると、香港中文大や香港理工大が主戦場となり、火炎瓶と催涙弾が飛び交う攻防戦に発展。スローガンも「香港人、報復せよ!」に変化し、警察への敵意が前面に出てきた。