トランプ氏とマスク氏、関係に終止符か?決別が政財界に招く波紋

ドナルド・トランプ前米大統領が、かつて友情の証として購入した赤いテスラ車を手放すことを決めたと、米メディアが7日に報じた。これは、トランプ氏とテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)との間に生じた関係の破綻を象徴するものと受け止められている。トランプ氏は同日、NBCニュースの電話インタビューでマスク氏との関係について「終わった」と述べ、お互いに激しい言葉を投げかけ衝突した末、ついに「公開決別」に至ったことを認めた。世界最強の権力者と世界最高の富豪のこうした破局は、米国の政財界に少なくない波紋を広げるとの見方が広がっている。マスク氏は同日、トランプ氏を攻撃するソーシャルメディアへの投稿を削除し事態収拾を図ったが、トランプ氏の心はすでに離れたという解釈が出ている。

かつての「ブロマンス」から一転

かつては「世紀のブロマンス」と称されるほど良好な関係を誇ったトランプ氏とマスク氏。その関係が破局を迎えた決定的な理由として、いくつかの要因が挙げられている。ニューヨーク・タイムズ紙は消息筋の話として、マスク氏が先月末に政府効率化省(DOGE)のトップを退任した直後、マスク氏の側近であるジャレッド・アイザックマン氏に対する米航空宇宙局(NASA)局長指名をトランプ氏が突然撤回した点がマスク氏を大きく刺激したと伝えている。

トランプ氏とテスラCEOイーロン・マスク氏の過去の写真トランプ氏とテスラCEOイーロン・マスク氏の過去の写真

また、マスク氏が130日間にわたりDOGEのトップを務める間、トランプ政権の主要閣僚としばしば衝突し、トランプ氏との関係にも亀裂が生じ始めたとされる。4月中旬にはホワイトハウスで国税庁長官代行人事問題で舌戦を展開し、ベッセント財務長官と小競り合いにまで発展したという。

関係悪化の引き金となった要因

減税法案への批判が導火線に

こうした状況下で、マスク氏がトランプ氏の減税法案を攻撃したことが、関係の全面戦争に火をつけた。マスク氏は3~4日連続して、この法案を「おぞましい」「廃棄せよ」と強く批判した。

ソーシャルメディアでの激しい応酬

その後、両者はソーシャルメディア上で公開の舌戦を展開した。マスク氏は「私が(選挙で)いなかったらトランプは負けただろう。恩を仇で返す」とトランプ氏を直接的に批判したのに続き、トランプ氏弾劾要求の投稿に「賛成」の意見を付け加えた。これに対し、トランプ氏は「イーロンに与える政府補助金と契約を切る」と威嚇するなど、応酬はエスカレートした。

それぞれへの影響と波紋

マスク氏の事業への潜在的打撃

トランプ氏との決別は、マスク氏の事業に潜在的な打撃を与える可能性がある。ワシントン・ポスト紙は、NASAや米国防総省などが、マスク氏が率いる宇宙企業スペースXの代替手段を模索していると報じた。現在、米政府機関はスペースXのロケットや宇宙船に大きく依存しているが、トランプ氏とマスク氏の衝突を機に、ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンなど他の企業と接触しているという情報もある。

また、トランプ氏はマスク氏の麻薬服用説も標的にしている。トランプ氏のブレーンだったスティーブ・バノン氏はメディアで「マスク氏の麻薬服用の有無を調査しなければならない」と主張。トランプ氏自身も側近に対し、マスク氏を「すごい麻薬中毒者」と話したと伝えられている。

トランプ氏の政治的立場への懸念

一方、トランプ氏にとっても、この決別は共和党内での立場を揺るがす政治的な損害となりかねない。マスク氏は「減税法案を支持する(共和党の)政治家らに政治資金を断つことができる」と警告した。減税法案は上院通過を控えているが、ただでさえ「国の負債を増やすことになる」と懸念する一部議員が、マスク氏の意向を意識して反対に回る場合、法案の通過が失敗する可能性も否定できない。マスク氏は5日、「トランプ氏の任期はあと3年半だが、私は今後40年以上活動するだろう」と述べ、自身の影響力が長期にわたることを示唆している。

結論

トランプ前大統領とイーロン・マスク氏の関係破綻は、個人的な感情のもつれだけでなく、側近人事、政権内での摩擦、そして主要な政策に対する意見の対立が複雑に絡み合った結果である。この公開された決別は、世界有数の政治家と経済人の間における影響力の衝突を浮き彫りにし、マスク氏のビジネスやトランプ氏の政治的基盤双方に現実的な影響をもたらす可能性を秘めている。政財界における二人の動向は、今後も注視されるだろう。

参照元: https://news.yahoo.co.jp/articles/982e65951cc09c4ddca3c17c91190343c4053965