近年、ネット通販やフードデリバリーが生活に深く浸透している韓国で、2024年7月に入り、異常な猛暑の影響により配達業者3名が相次いで熱中症とみられる症状で死亡し、韓国社会に大きな衝撃を与えています。この痛ましい出来事は、気候変動がもたらす新たな労働災害の実態を浮き彫りにしています。
韓国忠清南道瑞山市で猛暑と集中豪雨が同時に発生し、インフラに影響を与えている様子を示す。
猛暑がもたらす新たな犠牲者
死亡した配達員は43歳、51歳、53歳の男性3名で、うち2名は勤務中、1名は帰宅後に意識を失い、病院で息を引き取りました。この異常な暑さによる犠牲者は、配達業界に留まりません。7月7日には慶尚北道亀尾市で、マンション建設現場で働く23歳のベトナム人男性が地下室で死亡しているのが発見されました。さらに、同月8日には京畿道高陽市の大型スーパーでカート整理をしていた60代の男性作業員が、25日には慶尚北道浦項市で除草作業後の40代のネパール人男性がそれぞれ急死しており、いずれも熱中症との関連が指摘されています。また、農作業中の高齢者や中高年の熱中症死も後を絶たず、深刻な社会問題となっています。
過去に例を見ない韓国の「大陸性猛暑」
韓国の地理的位置を日本の都市に例えると、最南端の済州道が福岡市、最北端の江原道が仙台市、そして首都ソウル市が新潟市に相当します。かつては大陸性気候のため、冬は厳しい寒さである一方、夏は空気が乾燥しており日本よりも過ごしやすいと言われていました。しかし、この認識は過去のものとなりつつあります。2024年7月8日、ソウル市に近い京畿道光明市で40.2度、坡州市で40.1度の最高気温を観測し、首都圏で気温が40度を超えるのは観測史上初の出来事となりました。同日、ソウル市内の一部地域でも39.4〜39.5度を記録しています。その後も首都圏一帯の高温は収まらず、26日には京畿道広州市で40.5度、27日には同安城市で40.6度を記録し、ソウル市内でも38〜39度の記録的な暑さが続いています。
ソウル市の緊急対策と今後の課題
このような猛暑の状況を受け、ソウル市は7月23日、総額195億ウォン(約20.8億円)を投じ、低所得層に対する冷房費用支援策を発表しました。韓国における近年の記録的な猛暑は、労働者の健康と安全に甚大な影響を及ぼし、経済的弱者への負担を増大させています。気候変動による異常気象が常態化する中、政府および各自治体は、労働環境の改善や国民の命を守るための抜本的な熱中症対策を喫緊の課題として取り組む必要があります。
参考文献: