日本政治の中心で、石破茂首相は続投と退陣の間で揺れ動く自身の本音を漏らしている。その去就は、自身の政治生命を左右する森山裕党幹事長の動向に大きく依存しているようだ。一方、「保守復権」を旗印に次期自民党総裁選への出馬意欲を示す高市早苗前経済安保相も、ポスト石破の有力候補と目されながら、党内での支持拡大に苦慮している現状が明らかになっている。両者の動向は、来るべき自民党総裁選、ひいては日本の政治情勢に大きな影響を与えることは間違いない。
石破首相、「続投か退陣か」揺れる本音
石破首相は周辺に対し、「森山さんが辞める時は、私が辞める時です。森山さんのおかげで10カ月やってこられたのだから――」と、森山裕党幹事長(80)への深い信頼と依存を語っている。先の両院議員懇談会で森山氏が参議院選挙の総括後の辞任を示唆したことで、石破首相は自身の命運が幹事長の去就に大きく左右されることを痛感しているという。重要な政策決定や党内調整において、首相が森山幹事長に頼り切ってきた実態が浮き彫りになる。
また、首相は現職にしがみつく姿勢が批判を浴びる状況に対し、「伊東の市長と一緒にされてたまるかよ、みたいな感じがしますけどね。しがみついているって、一緒に見えるらしいよ」と、静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)の学歴詐称疑惑を巡る辞任表明と撤回騒動に言及し、自身との比較に不満を漏らしている。これは、驚異的な粘り腰で宰相の座に居座る石破首相が、外界の評価と自身の立場を常に意識していることの表れだろう。
首相官邸で執務にあたる石破茂首相の姿
ポスト石破を狙う高市早苗氏の苦境
石破首相の退陣が視野に入り始めたことで、自民党内ではすでに次期総裁選に向けた動きが活発化している。その中でも特に注目を集めているのが、高市早苗前経済安保相だ。ある政治部デスクは、高市氏が前回の総裁選で決選投票で敗れたものの、党員票では最多の20万3000票を獲得し、党内での根強い人気を示したことを指摘する。安全保障分野で保守的な政策を掲げる参政党の躍進も、タカ派として知られる高市氏にとっては追い風と見られている。
しかし、その実態は党内での苦境を物語っているという。高市氏の推薦人20名のうち16名が、裏金問題の震源地となった旧安倍派の所属議員だった。昨年の総選挙と今年の参院選を経て、そのうち8名が議席を失ったため、目下、高市氏が支援を期待できるのは、議席を死守できた旧安倍派の一部に限られる。
去る7月23日には、東京・赤坂の中華料理店に萩生田光一元政調会長(61)、松野博一前官房長官(62)、西村康稔元経済産業相(62)、世耕弘成前党参院幹事長(62)が参集し、「首相交代で一致」したと報じられた。「安倍派5人衆」とも呼ばれた元派閥幹部のうち4人のこの動きは、高市氏の支援に回るものと見られている。しかし、旧安倍派はすでに瓦解しており、前回総裁選では多くの中堅・若手議員が小泉進次郎農水相(44)や小林鷹之元経済安保相(50)の陣営に加わっていた経緯もある。現状として、高市氏の支持は広がりを欠き、次期総裁選への道は依然として厳しい状況にあると言える。
結論
石破首相の政権運営における森山幹事長への依存と、退陣論への複雑な胸中は、不安定な足元を示唆している。一方で、ポスト石破の最右翼と目されながらも、党内基盤の脆弱性から支持拡大に苦しむ高市早苗氏の現状もまた、自民党内の派閥構造の変化と無縁ではない。
今後の自民党総裁選は、これらの主要人物たちの動向だけでなく、旧安倍派の瓦解後の各派閥の再編や、裏金問題によって失われた国民からの信頼回復といった複雑な要因が絡み合い、激しい攻防が繰り広げられるだろう。日本政治の行方を占う上で、石破首相と高市氏、そして自民党内部の権力闘争の動向から目が離せない。