小泉農水相「給水車」発言に冷ややかな声 記録的猛暑で米作深刻化

記録的な猛暑が日本各地を襲う中、水田は干上がり、稲は枯れるという深刻な状況が米の生産に大きな影響を与え始めています。このような危機的状況下で、小泉進次郎農林水産大臣が発した「必要があれば給水車も出します」との発言は、渇水に苦しむ農家から冷ややかな反応をもって受け止められています。政府の対応と現場の現実との間に横たわるギャップが浮き彫りになっています。

小泉農水相、猛暑下での「給水車」視察と発言の波紋

2025年8月3日、小泉農林水産大臣は、ブランド米「コシヒカリ」の産地として知られる新潟県南魚沼市を視察しました。現地では干上がったため池に対し、給水車(散水車)で水を注ぎ込む様子を視察。その場で報道陣に対し、「必要があれば給水車も出します。米の収量に不安がある地域に水がきたと、そういった状況を届けていきたい」と発言しました。

小泉農水相「給水車」発言に冷ややかな声 記録的猛暑で米作深刻化

小泉大臣は自身のX(旧Twitter)でも、ため池への注水について「できることは何でもやります」「雨が降るまで少しでも足しになるように現場とともに乗り越えます! 現場に感謝」と積極的に情報発信しました。実際、渇水対策の緊急措置として、給水車やタンクローリーで水を運び、ため池や水田へ注水する試みは他の自治体でも行われてきた経緯があります。しかし、大臣の発言が全国規模での対策を意図するのか、その実効性について疑問の声が上がっています。

農家の本音「必要な給水車は何台?」その非現実性

南魚沼市でコシヒカリを生産するフエキ農園の代表取締役・笛木竜也氏は、小泉大臣の発言に対し、呆れた様子で語ります。「また、すごい発言をしました。この時期、水不足に苦しむ農家に水を回すというなら、いったい給水車を何台用意してくれるのでしょうか。本気なのか、冗談なのか」。

水が切実に求められている現状において、国が給水車を手配し、水を供給してくれるのであれば、これほどありがたい話はありません。しかし、笛木氏はそれがどれほど非現実的であるかを痛感しています。

そもそも、給水車の台数には限りがあります。2021年時点で、自治体が保有する給水車の合計は全国でわずか1330台。最も多い東京都でさえ30台に過ぎません。工事現場などで使われる民間の散水車を合わせても、「とても全国の水不足に悩む米農家には行きわたらない」と笛木氏は指摘します。広大な水田面積と深刻な渇水範囲を考慮すると、給水車による供給はあくまで局所的、一時的な措置にしかならないという厳しい現実があります。

現地の深刻な被害:水田は干上がり、稲は枯れ始めた

水不足は想像以上に深刻であり、笛木氏は心配で夜も眠れないほどだと言います。実際のところ、渇水は稲に壊滅的な悪影響をもたらす恐れがあるからです。

7月の南魚沼市(塩沢地区)の降水量は合計35ミリメートルで、平年のわずか16%に留まっています。特に深刻なのは同市の西側地域で、山が浅く保水能力が低いため、「水路にまったく水が流れていない状態」に陥っています。

笛木氏によると、8月2日の時点で、20ヘクタールの水田のうち1割弱にあたる田んぼで、水田が干上がり、稲の葉先が茶色に変色し、枯れ始めているとのこと。これは単なる一時的な問題ではなく、今年の米の収穫量に直接的な打撃を与える可能性を示唆しています。農林水産省が早急かつ大規模な、より現実的な渇水対策を講じることが求められています。

水不足が米の生産に与える影響は計り知れず、今後も状況は注視される必要があります。

参考文献