ウクライナ紛争終結見通せず 4カ国首脳会談、主権めぐり対立鮮明 





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 【パリ=小野田雄一】パリで9日に行われたロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による初の直接会談では、同国東部での完全停戦や捕虜交換などの信頼醸成措置で一定の前進があった。しかし、ウクライナの主権にかかわる親露派武装勢力の実効支配地域の扱いをめぐる溝は深く、紛争の終結は見通せない状況だ。

 ウクライナ東部紛争では、2015年2月のミンスク合意後も、ウクライナと親露派が互いに「合意違反」を非難し合ってきた。現在は大規模な戦闘こそ起きていないものの、これまでに双方で1万3千人以上が死亡。親露派は東部の実効支配を続けている。

 今回の首脳会談で改めて鮮明となったのは、ミンスク合意で定められた紛争終結に向けた手順をめぐる立場の相違だ。

 同合意では、(1)東部で選挙を実施した上で、(2)ウクライナは東部地域に高度な自治権など「特別な地位」を付与し、最終的に(3)ウクライナが東部とロシア間の国境管理権を回復する-としている。

 これに対してゼレンスキー氏は「合意の履行順序を変更し、選挙に先立ってウクライナによる国境管理の回復が必要だ」と主張してきた。国境を親露派に握られたままでは、ロシアから人やカネが自由に流入し、選挙への干渉が容易になるためだ。

 選挙が親露派の思惑で進めば、その後、東部に与えられる「特別な地位」が実質的な独立に近い形となり、ウクライナの主権や領土的な一体性が脅かされかねない。このためウクライナでは、合意を破棄すべきだとの意見も根強い。

 喜劇俳優出身で政治経験のないゼレンスキー氏は今年5月、大統領に就任。選挙戦では「ロシアとの対話による紛争終結」を掲げたが、国内では民族派を中心に、対話路線への批判も根強い。公約とした生活水準の向上や経済再建も進んでいない。政権支持率も下落傾向が続いており、安易に妥協はできない状況だ。

 ゼレンスキー氏は会談で、「ウクライナは(東部の)領土を譲らず、連邦制も取らない」と強調。今回の首脳会談を仲介した仏独両国や、米国のトランプ政権を後ろ盾に、ロシアに譲歩を迫りたい考えだ。

 ただ、ロシアはあくまでも合意の履行手順を順守するよう求めており、今後も歩み寄る可能性は低い。対立が再び激化する恐れは消えていない。



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