【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ワシントン・ポストは9日、アフガニスタンでの米軍の軍事作戦に関し、米軍幹部や米政府高官らが作戦は失敗していることを認識していながら、成果を上げているかのように装う隠蔽工作を長年にわたり展開していたと伝えた。米政府の内部文書で明らかになったとしている。
2001年9月11日の米中枢同時テロを受けて開始されたアフガンでの軍事作戦では、これまでに2400人以上の米兵が死亡。歴代米政権は総額約8400億ドル(約91兆2千億円)の戦費を費やしており、今回の報道を受けて米軍の早期撤収を求める世論の声が強まる可能性もある。
「教訓を得られた」と題された問題の文書は、国防総省の監察官が米軍や政府高官の高官ら600人以上からの聞き取り調査をまとめたもので、2千ページ以上にわたる。同紙が情報公開請求を通じて入手した。
それによると、息子ブッシュとオバマ両政権でアフガニスタン政策を統括する大統領特別補佐官を務めたダグラス・ルート退役陸軍中将は15年の聞き取り調査に対し、「アフガニスタンに関する根本的な理解に欠けていた。私たちは何をしているのか分かっていなかった」と述べた。
また、調査に応じた複数の高官らが、アフガンでの作戦が成功しているように見せかけるため「歪曲(わいきょく)や偽造、完全な虚偽」の統計情報を嘘だと承知しつつ日常的に喧伝(けんでん)していたことを認めたとしている。
内部文書の編纂(へんさん)を統括した「アフガニスタン再建特別監察総監室」(SIGAR)のジョン・ソプコ室長は同紙の取材に、「文書は米国民が恒常的に嘘を知らされていたことを示すものだ」と指摘した。
同紙は文書について、ベトナム戦争の内実を描いた内部文書「ペンタゴンペーパーズ」(1971年にニューヨーク・タイムズ紙が暴露)と比較し、「米軍はアフガン戦争の全期間を通じ、世論操作というベトナム戦争からの古い手口を駆使してきたことが読み取れる」と批判した。
一方、国防総省報道官は報道に関し「国防総省として議会や世論をミスリードする意図はなかった」と反論。聞き取り証言の多くは「後で振り返って分かる結果論だ」とし、「国防総省は(一連の)結果論を踏まえてアフガン戦略を修正した」と強調した。