NHKは来年1月から前田晃伸氏をトップに、山積する課題に取り組むことになる。総務省からガバナンス(組織統治)強化などの「三位一体改革」の実行を迫られ、さらに、かんぽ生命問題や常時同時配信などによる肥大化の懸念など、NHKに向けられる視線は依然として厳しい。巨大組織は自浄作用を発揮できるのか。
平成29年1月に就任した上田会長の再任が消えた背景には、不祥事の頻発があった。かんぽ生命保険の不正販売問題を報じた番組をめぐっては、日本郵政グループの抗議を受けた経営委員会が、ガバナンスの観点から上田会長に厳重注意を行った。
経営委の石原進委員長は9日の会見で、上田会長の評価について「ガバナンス、コンプライアンス(法令遵守)などについて問題点があるのではないかという(委員の)意見もあった」と説明。菅義偉官房長官は10日の会見で、上田会長について「このタイミングで評価するのは控えたい」と述べるにとどめた。
ガバナンス強化に加え、総務省からは受信料値下げ、業務のスリム化を合わせた三位一体改革の実行を求められている。テレビ番組を放送と同時にインターネットでも配信する「常時同時配信」に向けた、NHKのネット実施基準案に対し、総務省は肥大化を懸念して見直しを要請した。
収入の多くを経済情勢に左右されるCMに頼る民放に対し、NHKは安定的な受信料に支えられる。平成30年度決算(単体)によると、NHKが番組制作に投じた額は3475億円に上り、民放キー局トップの3倍超だ。
NHKは8日、ネット業務を圧縮する回答を示したが、受信料値下げや子会社を含む関連団体の見直しについて具体的な記述は乏しかった。引き継ぐ前田氏は、就任後に作成する中期経営計画などを通じ、三位一体改革の進捗度合いを厳しく問われることになる。