トランプ氏、プーチン氏とのアラスカ会談発表 ウクライナ「領土交換」に強く反発

米国とロシアの間でウクライナ侵攻を巡る緊張が高まる中、ドナルド・トランプ米大統領はロシアのウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談開催を発表しました。米アラスカ州を舞台とするこの会談は、国際社会の注目を集めています。特に、トランプ大統領が言及した「領土交換」の可能性に対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は強く反発し、領土割譲を断固として拒否する姿勢を示しています。本稿では、この重要な会談の背景、各国の思惑、そして今後の展開について詳しく報じます。

アラスカでの米露首脳会談発表とロシア側の反応

ドナルド・トランプ米大統領は8日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」を通じて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談が2025年8月15日金曜日にアラスカ州で開催されることを発表しました。この発表を受け、ロシア政府はプーチン大統領の出席を正式に認め、さらにトランプ氏をモスクワへ招待したことを明らかにしました。

クレムリン(ロシア大統領府)のユーリ・ウシャコフ外交担当補佐官は、プーチン大統領がトランプ氏との会談に出席すると追認し、「ロシアとアメリカは国境を接する近隣同士」であるため、「我々の代表団が単にベーリング海峡を越えて、これほど重要で期待されている両国の首脳会談がアラスカで開かれるのは、とても論理的なことに思える」とコメントしました。ウシャコフ補佐官は以前にも、両政府が会談場所について合意し、詳細協議を開始したと述べていました。

また、ウシャコフ補佐官は次回の首脳会談をモスクワで開催する可能性についても言及し、既に米国政府にトランプ氏を招待する意向を伝えたことを明らかにしました。これに対し、ホワイトハウスからの公式コメントはまだありません。現職の米国大統領が最後にロシアを訪問したのは、2013年に当時のバラク・オバマ大統領が主要20カ国(G20)サミットのためにサンクトペテルブルクを訪れた時でした。その翌年2014年にはロシアがウクライナ東部に侵攻しクリミア半島を併合したことで、ロシアと西側諸国の関係は大きく悪化しました。

トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が会談に臨む様子。ウクライナ戦争の解決に向けた議論が焦点となる米露首脳会談の重要性を示す。トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が会談に臨む様子。ウクライナ戦争の解決に向けた議論が焦点となる米露首脳会談の重要性を示す。

「領土交換」に言及するトランプ氏の思惑

トランプ大統領はソーシャルメディアでの発表に先立ち、ホワイトハウスで記者団に対し、「とても近いうちにプーチン大統領と会う。もっと早く会うはずだったが、残念ながら警備上の手配が必要なんだろう」と述べ、会談場所は「いろいろな意味でとても人気がある」場所になるだろうと示唆していました。

トランプ氏はさらに、プーチン氏との会談で交渉する取引には、ウクライナとロシアの「両国のためになる一定の領土交換」が関係する可能性があると言及しました。彼は「もう3年半もそのために戦い続けてきた領土がある。ロシア人が大勢死んだ。ウクライナ人が大勢死んだ。だから我々は、それを見ている」と述べ、「実際に一部を取り戻し、一部を交換することを検討している。複雑だし、実際、簡単ではない。一部を取り戻して一部を交換することになる」と説明しました。

この発言は、トランプ氏がアゼルバイジャンとアルメニアの両大統領をホワイトハウスに招き、和平に関する合意文書の署名を仲介した直後に行われました。トランプ氏は以前、ウクライナとの和平交渉に進展がなければ8月8日を期限に、ロシアに追加制裁を科すと述べていましたが、この日の発表は特に行われませんでした。

プーチン氏の和平条件と欧州の懸念

プーチン大統領は7日、モスクワでトランプ氏の特使スティーヴ・ウィトコフ氏と会談した際に、ロシアが求める和平条件を提示したとされています。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は消息筋の話として、プーチン氏がウクライナ軍に対し、東部ドネツクとルハンスク両州からの完全撤退を要求していると報じました。ロシアは現在、両州の大半をすでに制圧しています。

WSJはさらに、欧州諸国がその場合、ウクライナ東部ヘルソンとザポリッジャ両州がどうなるのかについて、より明確な説明を求めていると伝えました。ロシアはヘルソンとザポリッジャ両州の一部も掌握しています。WSJの報道によると、ロシア側の要求についてアメリカから説明を受けた欧州当局者たちは、プーチン氏が「今の前線を現状のまま凍結させるつもりなのか、それともヘルソンとザポリッジャ両州からはいずれ完全撤退するつもりなのか、どちらともとれて不明確だ」という印象を得たとのことです。なお、BBCはこのWSJの報道内容を独自に確認できていません。ウクライナ政府はこれまで、自国の代表が交渉に参加していない限り、いかなる領土割譲も受け入れられないと一貫して強調しています。

ウクライナ側の「領土交換」拒絶の姿勢

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、トランプ氏とプーチン氏が会談するとの発表を受け、ウクライナは「占領者に領土を明け渡さない」と強く表明しました。ゼレンスキー大統領はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した声明の中で、ウクライナ抜きの解決策は「平和に反する解決策」であると主張しました。

また、ゼレンスキー大統領はソーシャルメディア「X」にも動画声明を投稿し、「この戦争は終わらせなければならない。そして、それを終わらせるべきなのはロシアだ。ロシアが戦争を始め、戦争を長引かせ、あらゆる期限を無視している。それこそが問題で、それ以外のなにものでもない」と訴えました。彼はさらに、ウクライナ抜きで下された決定では「何も実現できない」、「それらは、そもそも失敗に終わる決定で、機能しない決定だ」と強調しました。

トランプ氏とプーチン氏の会談については、「我々の土地で激しさを増し、我々の国民に対して行われているこの戦争から非常に遠く離れた」場所で行われようとしていると指摘し、この戦争は「我々抜きで、ウクライナ抜きで終わらせることはできない」と主張しました。ゼレンスキー氏は、「真の」平和のために、「我々にはトランプ大統領、そしてすべてのパートナーと共に協力する用意がある」と述べ、対話の意欲を示しました。

ウクライナのアンドリー・シビハ外相も声明を発表し、「この戦争を始めたロシアが報われることがあってはならない」と訴えました。シビハ外相は、「ウクライナ人は、国際法と、我が国の憲法で定められた領土保全と国境に対する尊重に基づく、公正な平和を獲得するに値する」と述べ、さらに、アメリカとウクライナに「公正な平和を追求する継続的な意欲」があるにも関わらず、「ロシアは民間人に対するテロ行為を継続し、期限を無視し、戦争を終結させることに心からの関心を示していない」と付け加えました。その上で、ウクライナは、「ウクライナと共に交渉される意味のある対話と現実的な解決策」には今もオープンであると強調しました。

米露首脳会談の背景と今後の展望

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、ホワイトハウスが欧州各国に対し、ウクライナが領土のかなりの部分をロシアに渡すことを求める停戦案について説得を試みていると報じています。この停戦案では、ロシアは併合しているクリミア半島をそのまま支配し続けるほか、ドネツクとルハンスク両州からなるドンバス地方全域を領有することになるとされています。他方、ロシアはヘルソンとザポリッジャ両州はウクライナに返還することになると、CBSは伝えています。

CBSニュースによると、ホワイトハウス幹部の一人は、15日の米露首脳会談の計画はまだ流動的であり、ゼレンスキー氏が何らかの形で関わる可能性はまだあると話しているとのことです。

トランプ氏は8日に記者団に対し、3カ国間の合意形成をアメリカが実現する可能性がまだあると強調しました。彼は「欧州首脳たちは平和を求めている。プーチン大統領も平和を求めていると思う。ゼレンスキー氏も平和を求めている」と述べ、「ゼレンスキー大統領は、彼が必要とするものをすべて手に入れる必要がある。何かに調印する用意を彼はする必要があるし、その実現のために懸命に努力していると思う」と話し、各国の思惑が交錯する中で和平への期待を示しました。

結論

トランプ米大統領とプーチン露大統領のアラスカでの会談発表は、ウクライナ戦争の今後の行方を左右する重要な局面として国際社会から大きな注目を集めています。特にトランプ氏が提唱する「領土交換」案に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領が断固として拒否する姿勢を示しており、和平への道筋は依然として複雑です。ロシア、ウクライナ、そして主要な国際アクターそれぞれの思惑が入り混じる中、この米露首脳会談がどのような結果をもたらすのか、その行方は予断を許しません。世界情勢の動向に今後も注視が必要です。

参照元

  • BBC News
  • Yahoo News Japan