子どもが成長するにつれて、多くの親御さんが「自立」というテーマに直面します。「朝、自分で起きる」「言われなくても宿題をやる」といった行動は、一見すると「自立した子」の証のように思えるかもしれません。しかし、長年の経験を持つ教育評論家・親野智可等氏は、この一般的な「自立」の定義には大きな誤解があると指摘します。果たして、激動の時代を生き抜く子どもたちに本当に必要な「自立」とは何なのでしょうか。
親が求める「自立」は「育てやすい子」の表れ?
親御さんが「子どもに自立してほしい」と願う時、その内容は往々にして「親がやらせたいことを自分からやってくれる、育てやすい子」を指していることが多いものです。例えば、「自分で着替える」「進んで歯を磨く」「明日の支度を自分でする」といった行動は、確かに日常生活において望ましい姿です。しかし、親野氏は、これらができなくとも過度に心配する必要はないと強調します。子どもの成長ペースには生まれつきの大きな個人差があり、早くから何でもこなせる「早熟型」の子もいれば、大人になってから徐々にできるようになる「晩熟型」の子もいるためです。成長を急かす必要はありません。
「真の自立」とは、自分で「やりたいこと」を見つける力
親野氏が本当に重要だと考える「自立」は、一般的な認識とは全く異なります。それは、「自分がやりたいことを自分で見つけて、どんどんやっていける」という能力です。特に変化の激しい現代社会において、この「真の自立」の重要性は増しています。
大人でも「言われたことはきちんとこなせるが、自分で特にやりたいことはない」という人は少なくありません。これでは、真に自立しているとは言えません。昭和の時代であれば、「指示待ち人間」として優秀な歯車になることが重宝されたかもしれません。しかし、現代そしてこれからの時代では、このような「指示待ち」の姿勢では、仕事でもプライベートでも限界を迎える可能性が高いでしょう。
「指示待ち人間」では通用しない激動の時代
仕事の場では、「部長、これこれこういう理由で、このような企画が最善だと思います。ぜひ私にやらせてください」と、自ら提案し、行動できる人が大きく成長していきます。指示を待つのではなく、自ら価値を生み出す主体性が求められているのです。
また、プライベートにおいても、周りが読むからと流行の本を読み、周りが見るからと人気の映画を見て、周りが行くからと話題の場所に行く、といった「流される人生」では、本当の充実感は得られにくいでしょう。「自分は何が好きなのかわからない」まま50代、60代を迎えてしまう可能性さえあります。
本当に充実した人生を送るためには、「自分はこういう本を読みたい」「こういうことをしたい」「こういう生き方をしたい」といった、自分自身の主体性を持つことが不可欠です。このような生き方ができている人は、日々の時間を豊かに過ごし、年齢を重ねるごとに独自の輝きを放つようになります。
子どもの頃からの「主体性」育成の重要性
このような「自分がやりたいことを自分で見つけて、どんどんやっていける」という真の自立を可能にするためには、子どもの頃からその能力を大切に育む必要があります。幼い頃に「言われたことに従うこと」ばかりを良しとして育てた場合、大人になってから急に「自分で考え、行動しろ」と言われても、それは無理な要求となるでしょう。
最後に、親野氏は次のように付け加えています。「真に自立している子は、往々にして親の言うことを聞かないため、子育ては大変に感じるかもしれません。しかし、その大変さこそを、ぜひ楽しんでください。」
参考文献:
- 親野智可等 著, 『ずるい子育て』, ダイヤモンド社