近年、育児中の教員や短時間勤務者を支える「チーム担任制」が全国各地で広がりを見せています。その中で、京都市右京区の京都市立嵯峨野小学校(全校児童508人)は、さらに進んだ試みとして、複数の教員で一つの学年全体を担当する「学年担任制」を導入し、教員の働き方改革と子育て支援における新たなモデルを提示しています。
育児中の教諭を支える新たな働き方
京都市右京区の職員室で児童の情報を共有する森下教諭(中央)と同学年の教員たち
午後3時過ぎの職員室では、育児時短勤務を取得している森下彩華教諭(31)を含む、1年生の2学級を担当する3人の教員が児童に関する情報共有を行っていました。連絡帳に記載された子供の体調や家庭での様子、学校生活での気づきなど、些細な情報も毎日ざっくばらんに話し合われます。森下教諭は、朝は2人の子供を保育園に送った後、定時より30分遅い午前9時に出勤し、放課後は1時間早い午後4時には退勤します。「子育てと仕事が両立できるのは、この学年担任制のおかげ。本当に感謝しています」と、その効果を実感しています。
教員不足と働き方改革への対応
日本の小学校では、一人の教員が一つの学級を運営する「学級担任制」が基本とされています。しかし、近年、教員不足が深刻化し、学級数に見合うだけのフルタイム教員を配置できないケースも少なくありません。このような状況に対応するための一つの解決策として、「チーム担任制」が注目されてきました。これは、フルタイム教員、育児や介護などの事情を持つ時短勤務者、講師などの非常勤教員が連携し、共同で担任業務を分担する仕組みです。
嵯峨野小学校では、2023年度にフルタイム教員が不足したことを受け、時短勤務者と非常勤教員が協力して学級担任を行うチーム担任制を導入しました。そして、宇津木秀史校長が就任した2024年度からは、さらに一歩進んで「学級担任」という概念をなくし、学年全体を複数教員で担当する「学年担任制」に移行しました。この柔軟な働き方を取り入れることで、教員がより長く働き続けられる環境を整え、教員確保の一助となることも期待されています。
嵯峨野小学校の「学年担任制」の具体像
嵯峨野小学校の学年担任制では、例えば3学級の学年であれば、時短勤務の教員を含めて学級数より1人多い4人の教員でその学年全体を担当します。従来の学級担任が行っていた朝の会は1時間目を担当する教員が行い、給食指導は4時間目の教員が担当するなど、業務が分担されます。児童の行動で気になったことや、保護者からの相談については、原則として毎日、担当教員間で情報を共有し、学年全体で児童をサポートする体制が築かれています。
宇津木校長は、「学年全員が自分の教え子だという気持ちで児童に向き合っています」と語ります。導入当初は保護者から「学級担任制をやめるのか」と驚きの声も上がったものの、現在ではこのシステムが学校全体にすっかり浸透し、大きな手応えを感じているとのことです。この学年担任制は、教員一人当たりの負担を軽減し、専門性を活かした指導を可能にするだけでなく、多様な働き方を選ぶ教員が安心してキャリアを継続できる環境を提供しています。
まとめ
京都市立嵯峨野小学校が導入した「学年担任制」は、教員不足という課題に対し、教員の働き方を柔軟にし、子育て中の教員が安心して働ける画期的な解決策です。このシステムは、教員間の密な連携と情報共有を促し、学年全体で児童を育むという新たな教育の形を提示しています。今後、この先進的な取り組みが他の学校にも広がり、日本の教育現場における働き方改革と質の高い教育の実現に貢献することが期待されます。
出典
育児中の教員に朗報!京都市の小学校が「学年担任制」導入で子育てと仕事の両立を支援 (Yahoo!ニュース)