平成24年に21人抜きで真打ちとなり、今や「最もチケットが取れない落語家」となった春風亭一之輔(41)が、自身最長の7日連続独演会「2019落語一之輔七夜」(産経新聞社、読売新聞社主催)を完走した。7公演計3500席はもちろん完売。本紙の取材に、早くも落語ファンの間で“伝説”となりつつある7日間を振り返るとともに、将来の大きな目標を明かした。(岩渕直一)
26年から毎年10月の恒例行事となった独演会「落語一之輔」。26年は1日で3席、翌年は2日で計6席と年を追うごとに増え、5年目の昨年は5日で計15席。そして今年は6を飛ばして「七夜」に挑戦。10月21~27日、東京都千代田区のよみうり大手町ホールで、計21席を披露した。
「無事終わってよかったですよ。声の調子もよかったし、楽しくやれました。でもねえ、やりたいネタはもっとあった。ネタは僕のパートナー、お友達ですから。普段お世話になっているお友達を、初めて聞く方にご紹介して、常連さんには『こいつ、いいヤツですよね』と見てもらいたい。いろいろと悩みました」
古典の人情噺(ばなし)と滑稽噺、そして新作と200本以上のネタを自在に操るだけに、7日あっても足りなかった様子だ。
千葉県野田市出身。日大芸術学部では落研に所属し、卒業した平成13年、春風亭一朝に入門した。12歳上の長姉を筆頭に3人の姉がいる末っ子で「幼稚園のころからテレビは上の世代のものを見ていた」ため話題も多彩で、話が脱線しても場内は大爆笑の連続だ。
「稽古を積んで完全に腹に入っているネタは、自然に口が動いてくる。楽しんでいるお客さんに自分も乗っかって、流れに任せて弾ける。さらに七夜も後半を過ぎてくたびれてきたら、登場人物が勝手にしゃべり出してきた。一番楽しい瞬間ですよね」