連日、国内外から多くの人々で賑わう東京・渋谷。日本有数の人気観光地として知られる一方で、特にセンター街周辺のコンビニエンスストア前では、出入口を塞ぐほどの外国人が酒を片手にたむろする様子がSNSでたびたび話題となってきた。これを受け、渋谷区は路上飲酒対策に力を入れており、区全域で「迷惑路上飲酒ゼロ宣言」を掲げ、禁止エリアを制定している。昨年10月1日には改正条例を施行し、18時から翌5時までの公共の場所での路上飲酒を禁止した上で、防犯のためのパトロールも巡回させているが、その効果は果たしてどれほどのものなのだろうか。外国人による路上飲酒のリアルな実情を、現地で働く人々の声から探る。
昼夜で異なる「渋谷の顔」:地元美容師が見た現実
渋谷駅からほど近い美容室に勤務する美容師Aさん(30代男性)は、最近の渋谷について「昼と夜とで、街の雰囲気が全然違う」と話す。「昼は若者や観光客の街という感じですが、夜になると騒ぎたい人たちが集まってくる」と、その変貌ぶりを指摘する。
「昼間も外国人観光客は多いですが、ほとんどがグループで行動しています。しかし、20時頃から様子が変わりますね。ガードレールに腰掛けて缶チューハイを飲む人たちや、地面に座り込んで飲み会をしているグループなど、路上飲酒禁止のルールが疑わしくなるほどの光景が広がります」
渋谷センター街で活動するパトロール隊と多くの外国人観光客で賑わう通り。路上飲酒対策の課題を示す風景。
横行するポイ捨てと、高まる「観光公害」の懸念
路上飲酒と並び、Aさんが懸念するのがポイ捨ての横行だという。「飲み終わった缶や瓶を放置する人は非常に多いです。歩きながら飲酒をしていて、飲み終わればそのまま路上に空き缶や瓶を投げ捨てている光景も何度も目撃しています。ひどいときにはゲームセンターで手に入れたフィギュアの箱なんかも道路に捨てられていますね。日本には『ゴミを持ち帰る』という文化があることを知らないのかな、と感じることもあります」と、文化の違いに起因する可能性を示唆した。
インバウンド特化店舗がもたらす集中の弊害
Aさんは、インバウンドを狙った商売が、街の特定エリアが荒れる要因ではないかと分析する。「明らかに外国人観光客向けの店が増えましたし、外国人が多いような場所を日本人が避けるようになっているせいか、特定の店に外国人が集まりがちです。特に渋谷センター街付近ではそれが顕著で、ゲームセンターやドン・キホーテ、ドラッグストアなど、外国人に人気の高い店が同じエリアに固まっているため、必然的に外国人だらけになる傾向があります」と語った。
渋谷センター街のコンビニエンスストア前で、路上飲酒によりアルコールが回収される様子。インバウンド客による混雑が深刻化している。
渋谷区が様々な対策を講じる中で、路上飲酒やそれに伴う迷惑行為が依然として見受けられる現状は、国際観光都市としての渋谷が抱える根深い課題を示唆している。条例の施行やパトロールの強化だけでは解決しきれない、文化や習慣の違いに根ざした問題に対し、今後どのようなアプローチが求められるのか、引き続き注視が必要だ。