オーストラリア政府は5日、豪海軍が導入を計画している新型艦に、日本製の最新鋭「もがみ」型護衛艦(FFM)を採用すると発表しました。総額65億ドル(約9500億円)を見込むこの決定は、オーストラリアを太平洋の海洋大国へと押し上げると共に、日本を主要な武器輸出国へと変貌させる契機になり得るとアナリストらは指摘しています。
「もがみ」型護衛艦の戦略的採用と背景
豪国防省は、新型艦11隻の調達計画において、ステルス性能に優れた日本の「もがみ」型護衛艦の導入を決定しました。このFFMは、中国や米国が運用する艦艇に匹敵、あるいはそれ以上の性能を有する可能性が指摘されています。リチャード・コンロイ国防産業相は、「同盟国に安心感を与え、敵対国を抑止するステルス性能を備えたフリゲート艦の保有は、海軍力の増強に向けた新たな一歩だ」と述べ、その戦略的意義を強調しました。
オーストラリアにとって安全保障上の最大の懸念は、近隣地域で拡大する中国との勢力争いです。今年初めには、中国海軍の艦隊がオーストラリアを周回し、同国沖で実弾演習を実施。これにより民間機が航路変更を余儀なくされる出来事もありました。
豪州政府によると、導入されるのは海上自衛隊が配備する「もがみ」型の改良型です。この改良型は、火力が強化されるだけでなく、無給油で航行可能な航続距離が約1万8500キロメートル(赤道の約半周に相当)に延伸されるなど、長距離での作戦能力が向上します。日本の元防衛相(記事当時)も、コンロイ氏と同様の見解を示し、特別な戦略的パートナーであるオーストラリアとの安全保障協力をさらなる高みに引き上げる「大きな一歩」だと述べています。
革新的な兵装と乗組員効率
三菱重工業が建造する新型FFMは、強力な兵装を備えています。対空・対艦ミサイルを発射するMk41垂直発射装置(VLS)を装備し、発射セルは32基。防空ミサイル128発が発射可能であり、これは現在の豪水上艦の発射可能数の4倍に相当するとコンロイ氏は説明しました。アナリストらは、米ロッキード・マーチン製のMk41は、射程約1600キロメートルのトマホーク巡航ミサイルを搭載できるほど十分な大きさがあり、これにより艦艇の攻撃範囲が大幅に拡大し得ると指摘しています。
豪州海軍の新型汎用フリゲート艦(もがみ型護衛艦ベース)の完成予想図。高性能Mk41VLSを搭載し、2030年就役予定。
また、長距離対潜ロケットの発射にも使用可能で、原子力潜水艦を追尾する能力が向上すると、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員、シッダールト・カウシャル氏は述べています。
日本製新型FFMの大きな特長の一つは、乗組員が少数で済む点です。オーストラリアで就役中のアンザック級フリゲート艦は170人の乗組員を要するのに対し、新型FFMはわずか90人で運用できます。乗組員の少人数化は、軍の人員不足が課題となっている日本やオーストラリアなど、多くの国にとって重要な利点となります。マールズ豪副首相は、「より大型の艦艇でありながら、より少ない乗組員で運用できるというのは、この艦がいかに近代的であるかを物語っている」と評価しています。
結論
オーストラリアによる日本の「もがみ」型護衛艦の導入は、両国の防衛協力における画期的な進展を意味します。この高性能な艦艇の取得は、オーストラリアの海軍力を大幅に強化し、拡大するインド太平洋地域の安全保障課題、特に中国の軍事力拡大への抑止力として重要な役割を果たすでしょう。同時に、日本の防衛装備品の輸出を促進し、国際社会における日本の安全保障分野での貢献を一層高めるものと期待されます。この動きは、地域の安定とバランスを維持するための重要な一歩となるでしょう。
出典:
- CNN (https://news.yahoo.co.jp/articles/dc035d179c3fe6393bb637339bddfe722f680aa2)
- その他、記事内で言及されている情報源(豪国防省、NHK、英王立防衛安全保障研究所など)