豪雨注意報が発令されたソウルの在韓日本大使館前で8月13日正午、日本軍「慰安婦」被害者で女性人権活動家のイ・ヨンスさん(97)が、「雨の中、こんなにも多くの皆さんが集まってくださり、涙が出ます。ありがとうございます」と、震える声で「水曜デモ」参加者に感謝を伝えた。レインコートを着用し傘を差した約600人の市民(警察非公式推計)は、拍手と歓声で応えた。この日開催された第1713回水曜デモは、光復80周年を2日後、そして世界日本軍「慰安婦」メモリアルデーを翌日に控えた重要な節目に行われ、正義記憶連帯(正義連)をはじめ日本、台湾、米国、ドイツなど10カ国166団体が参加する大規模な世界連帯集会となった。
豪雨の中、ソウルの在韓日本大使館前で開かれた日本軍「慰安婦」問題解決を求める「水曜デモ」の様子。参加者たちが傘を差し、プラカードを掲げている。
世界連帯集会としての意義と歴史的背景
「水曜デモ」は、日本軍「慰安婦」問題の解決を求める市民運動の一環として、1992年1月8日に始まり、毎週水曜日に在韓日本大使館前で行われてきた。この日の集会は、1991年8月14日に日本軍「慰安婦」被害者の故金学順(キム・ハクスン)さん(1997年死去)が世界に向けて初めて被害を証言したことを記憶する「世界日本軍『慰安婦』メモリアルデー」の前日にあたった。韓国政府は2018年にこのメモリアルデーを法定記念日と定め、その歴史的意義を強調している。光復80周年を迎える今年は、「あなたの光、希望という未来」をテーマに、国際的な連帯を深める場となった。世界各国からの団体が参加することで、この問題が単なる日韓間の問題ではなく、普遍的な人権問題として国際社会に認識されていることが示された。
被害者と市民団体の具体的な要求
デモに参加したイ・ヨンスさんは、李在明(イ・ジェミョン)大統領に対し「被害者保護法(日帝下日本軍慰安婦被害者に対する保護・支援および記念事業などに関する法律)を改正してください」と強く訴え、日本政府に対しては「早く(法的賠償を)執行してください」と要求した。正義連をはじめとする市民団体は、被害者を標的とした虚偽情報の流布、侮辱、名誉毀損などを処罰できるよう、慰安婦被害者法の改正を長年主張してきた。
正義連と共同主管団体は声明において、日本政府に対して「公式謝罪」「法的賠償」「歴史歪曲の中止」を明確に求めた。声明では「日本政府による歴史の否定と歪曲は次第に佳境に入っている」と批判し、被害者が長い闘争の末に勝ち取った勝訴判決に対しても「国際法違反をうんぬんして賠償責任を無視している」と非難した。また、韓国政府に対しても「広場の市民の力で成立した国民主権政府には、日本の朝鮮半島不法占拠、反人道的犯罪行為の責任を問い、歴史正義を確立するよう求める」とし、2015年に日韓両政府が「最終的かつ不可逆的解決」を宣言した韓日合意の完全廃棄などを要求した。
教育現場における歴史歪曲への懸念と市民の声
最近、リバクスクール疑惑のように、教育界においてすら日本軍「慰安婦」についての歪曲された認識が広められようとしていたことが明らかになり、水曜デモを訪れた市民からは強い懸念の声が上がった。中学生の娘と共に休暇を取り集会に参加したKさん(54)は、「リバクスクールのような団体が平然と歴史を歪曲しようとしていたのに、問題も提起せず無防備状態だった学校を見て怖かった。職場の同僚たちに、教育のためにも子どもたちと水曜デモに行くことを勧めたい」と、歴史教育の重要性を強調した。これは、次世代への正しい歴史認識の継承に対する市民の強い意識を反映している。
新政権への期待と歴史問題の行方
李在明政権に対し、前向きな日韓の歴史問題解決策を求める声も強かった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、日本の戦犯企業による賠償ではなく民間の寄付金で被害者への賠償金を支給する「第三者弁済案」などを推進してきたが、これに対する批判的な見解も示された。小学校教師のヤン・ヘジュンさん(43)は、「前政権の政策は極右的な傾向が強かったが、この間偏っていた重心を真ん中に持ってくる必要がある。日本が心から謝罪できるよう、李在明政権は努力してほしい」と述べ、より公正で歴史的事実に即した解決への期待を表明した。
結論
豪雨の中での開催となった第1713回水曜デモは、単なる定例集会に留まらず、光復80周年と世界メモリアルデーを控えた節目において、日本軍「慰安婦」問題の普遍的な人権問題としての側面と、国際的な連帯の重要性を改めて示す場となった。被害者や市民団体が日本政府に公式謝罪と法的賠償、歴史歪曲の停止を求める一方で、韓国政府に対しても、歴史的正義の確立と過去の日韓合意の再検討を要求する声が上がった。教育現場での歴史歪曲への懸念や、新たな政権への期待も示され、この問題が依然として日韓両国の社会に深く根差し、未来に向けた解決が求められていることが浮き彫りとなった。