先の参院選における自民党の大敗は、石破茂政権にとって大きな試練となっています。昨年の衆院選、そして今年の都議選に続く敗北は、政権をまさに「ノックアウト寸前」の苦境に追い込みました。党内外からは総理退任論が噴出する中、石破総理自身は続投への強い意欲を隠しません。しかし、自民党内では「反石破派」による包囲網が着々と築かれ、政権の行方を左右する深刻な政局が展開されています。
石破茂総理大臣、厳しい党内情勢に直面する様子
両院議員総会:反石破派の戦略的勝利
「私どもとして引き続きこの日本国に責任をもってまいりますために色々なご意見を承りたい」。最高気温が35度にも達する猛暑日の8月8日、東京・永田町の自民党本部では両院議員総会が開催されました。党大会に次ぐ意思決定機関とされるこの重要な会合で、石破総理は改めて続投への強い決意を示しました。総会には党所属議員297人のうち、8割以上にあたる253人が出席し、そのうち35人が発言しました。石破総理が自身のX(旧Twitter)に投稿した写真では空席が目立つように見えますが、実際には多くの議員が顔を揃えていました。この総会の開催を巡っては、水面下で石破執行部と反石破派の間で熾烈な駆け引きが繰り広げられていたことが、その後の取材で明らかになっています。最終的な結論としては、この両院議員総会は反石破派側に軍配が上がったと言えるでしょう。
自民党両院議員総会の会場風景。石破総理のSNS写真とは異なり、多くの議員が出席し議論が行われた
総裁選前倒し論の浮上と水面下の攻防
自民党の両院議員総会は、党所属議員の3分の1の署名があれば執行部に対して開催を求めることができます。今回の総会開催に際しては、旧茂木派などが中心となって今月上旬には必要な署名がほぼ集まりました。この情報を入手し、署名提出が不可避であると判断した石破執行部側は、森山裕幹事長が先手を打ちました。森山幹事長は事前に、「両院議員総会で総裁の辞任は決められない」という自民党の明確なルールがあることを「石破降ろし」を図る側へ通告しました。さらに、開催日を議員が地元に戻る金曜の午後に設定し、会合が2時間で終わるように仕組むという周到さを見せました。
これに対し、「石破降ろし」を図る反石破派側は、石破総理を直接辞任に追い込むという強硬路線から、あえて防衛ラインを下げる秘密裏の作戦を練っていました。その狙いは、「総裁選前倒し」の可否を検討させるという、より現実的な目標にシフトすることでした。出席した議員への取材によると、2時間の総会は冒頭、石破総理が「関税交渉、米問題、防災をどうするのか。引き続き日本国に責任を持っていく」と述べ、改めて政権続投を宣言するところから始まりました。
今後の政局の焦点
今回の両院議員総会は、石破政権の求心力低下と、党内における「反石破派」の勢力拡大を明確に示しました。石破総理の続投意欲とは裏腹に、総裁選前倒し論が党内で具体的に浮上したことは、今後の自民党内の政局に大きな影響を与えるでしょう。国民からの信頼回復が喫緊の課題となる中、石破政権は党内の厳しい視線と国民の批判に晒されており、その政権運営は一層困難を極めると予想されます。自民党がどのような意思決定を下し、この政治的試練を乗り越えていくのか、今後の動向が注目されます。