VANKパク団長が警告するAI時代の情報歪曲と新たなデジタル外交戦略「Weform」

世界中でK-POPをはじめとする韓国文化への関心が高まる中、その裏で深刻化する「情報歪曲」の問題が浮上しています。特に人工知能(AI)の急速な発展は、この問題に新たな次元をもたらしていると指摘されています。韓国関連情報の誤謬を是正する活動を27年間続けてきた非政府団体(NGO)VANKのパク・ギテ団長は、グローバルな韓流ブームの陰で、インターネット上に広がる誤った情報への懸念を表明し、その対策として新たなグローバルガバナンスプラットフォーム「Weform」の始動を発表しました。

Kカルチャーの隆盛とVANKの27年

Netflixアニメーション映画『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』が歴代最多視聴数を記録し、挿入曲が米ビルボードチャート1位を獲得するなど、現在のKカルチャーブームは世界中に韓国への大きな関心をもたらしています。しかし、VANKのパク・ギテ団長は、2億人を超える世界の韓流ファンがインターネット上で接する韓国関連情報の多くが未だに歪曲された形で拡散されている現状に警鐘を鳴らします。

1999年に大学生海外ペンパルサイトを基盤に設立されたVANKは、当初、海外の教科書や地図における「東海(トンヘ、日本名・日本海)」や「独島(ドクト、日本名・竹島)」の表記誤謬是正に集中してきました。活動初期には世界の地図で東海が表記されていたのはわずか3%でしたが、現在は40%にまで増加しています。パク団長は、設立当時「無名の国」であった韓国が韓流ブームによって世界的な注目を集めるようになったことで、是正すべき情報も歴史や文化など、より多様化していると述べています。VANKは、インターネット時代に先駆けて「国民一人一人が外交官」をモットーに、四半世紀以上にわたりデジタル外交活動を開拓し、国際社会における誤情報是正のパイオニアとしての役割を担ってきました。

AIによる深刻な情報歪曲の実態

パク団長は、VANKによるモニタリング活動とAIの学習速度の間に大きなギャップが生じていると診断しています。最近の生成AIプラットフォームへの調査では、韓国の主要文化遺産に関する質問に対して、景福宮が日本の大阪城の画像で表示されたり、独島が南太平洋の孤島のような姿で現れたり、石窟庵が洞窟の外に仏像があるかのようなイメージが表示されるなど、AIが韓国の歴史・文化、さらにはランドマークさえも正確に学習していない実態が明らかになりました。

この情報歪曲の背景には、いくつかの要因があります。韓国政府の公式ウェブサイトの多くがセキュリティ上の理由から海外での閲覧が制限される場合が多く、AIがインターネット上のテキストを学習する際に、韓国よりも中国や日本の資料に先に、かつ大量に接していることが指摘されています。結果として、AIが韓国に関する歪曲された情報をそのまま取り込んでしまっているのです。生成AIが世界の多くの人々に日常的に利用されるようになっている現代において、歴史歪曲がこれまでよりもはるかに速いペースで拡散するリスクが高まっていることに、VANKは強い懸念を示しています。

新たな挑戦:グローバルガバナンスプラットフォーム「Weform」の始動

このような状況の深刻性を認識したVANKは、対策の準備に注力し、その結果、光復(解放)80周年を迎えるにあたり、グローバルガバナンスプラットフォーム「Weform」を正式に開始しました。これまで運営してきた国際請願プラットフォーム「ブリッジ・アジア(Bridge Asia)」や国民参加政策プラットフォーム「ウルリム」「ヨルリム」などの経験を活かし、新しいデジタル情報歪曲是正および正しい情報拡散運動を展開しています。

パク団長は、Weformの目的について「一般市民も誰でも簡単に参加できる『開かれた外交空間』を提供すること」と説明します。グローバルなイシューや主要な歪曲イシューについて市民が自由に意見を提示し、共同議論を通して政策提案に発展させ、最終的には国際機関や関連国政府の政策に実際に反映させることを目標としています。これは、単に情報を是正するだけでなく、市民の参加を通じて国際社会における韓国のプレゼンスと影響力を高めようとする、より積極的なデジタル外交の試みと言えるでしょう。

「東洋平和論」に見る21世紀の「光復」

光復80周年という節目にWeformを開始したことには、深い意味が込められています。パク団長は、光復節が独立活動家を称えるだけでなく、その本来の意味を再確認することが重要だと強調します。1907年に高宗がオランダ・ハーグで開催された万国平和会議に特使を派遣し、乙巳勒約の不法性を訴えようとしたものの、特使が会議場に入ることさえできなかった歴史を振り返り、光復を経て主権を取り戻した現代においても、自国の利益を基盤とする歴史歪曲など、国際社会の冷厳な現実は変わっていないと指摘します。

しかし、パク団長は、もはや韓国は国際舞台で「ただ訴えるだけ」の立場ではなく、主導権を握って「K-ガバナンス」を実現できる力量を十分に備えていると断言します。光復80周年を新たな契機として、VANKは安重根義士が1910年に獄中で執筆した未完の遺稿「東洋平和論」を特に強調しています。安義士は当時、帝国主義列強に侵奪された東アジアの現実に対し、「武力衝突」ではなく「国家間協力」を通じた平和構築という代案を提示しました。これは、東アジア内部の自律的連帯を通して西欧列強中心の国際秩序に対応しようという戦略的思想であり、そのメッセージは現代においても有効であるとVANKは考えています。

VANKは、「いま全世界が最も至急に解決するべき国際問題は何か」という問いを投げかけ、世界の中の文化強国へと急成長した韓国が、Kカルチャーの影響力を梃子にソフトパワー強国へと飛躍することこそが、21世紀のもう一つの「光復」になるとの展望を示しています。

結論

VANKのパク・ギテ団長が示すように、Kカルチャーの世界的な広がりとともに、韓国に関する誤情報の拡散、特にAIによる歪曲は深刻な課題となっています。VANKが長年培ってきた情報是正の経験と、新たに始動したグローバルガバナンスプラットフォーム「Weform」は、この問題に対する市民参加型のデジタル外交の可能性を広げます。国際社会における誤情報に市民が主体的に関与し、正確な情報を共有することで、より信頼性の高い情報環境を構築し、韓国のソフトパワーを活かした「K-ガバナンス」を実現することが、21世紀の新たな「光復」へと繋がるでしょう。VANKの活動は、現代の情報化社会における国民の役割と、国際協力の重要性を再認識させるものです。

参考文献