参政党「終戦80年談話」に歴史的誤謬指摘 自民党の衆参過半数割れは「初」ではない

2025年8月15日、終戦から80年を迎えるこの節目に、参政党は公式サイトなどで「終戦80年談話」を発表しました。しかし、この談話に書かれた日本の政治史に関する事実関係に致命的な誤りが含まれていることが判明し、SNS上では瞬く間に「総ツッコミ」を受ける事態となっています。この誤謬は、特に戦後の日本の政権交代における重要な歴史的転換点に関するものであり、多くの識者や一般市民から正確な歴史認識の欠如を指摘されています。

参政党による靖国神社集団参拝と「終戦80年談話」の発表

終戦記念日である2025年8月15日、参政党の国会議員および地方議員ら88人が靖国神社を集団で参拝しました。党代表の神谷宗幣氏は報道陣の取材に応じ、「国のため、そして皆を守るために戦い、尊い命を失われた方々に、心からの感謝と追悼の気持ちをお伝えしたい」と述べ、英霊への敬意を表しました。

参拝後、神谷代表は自身のX(旧Twitter)アカウントを通じて、党が発表した「終戦80年談話」を紹介しました。この談話は、日本の近現代史に触れる内容を含んでおり、「遡れば戊辰戦争から157年。不平等条約の改正を求め、脱亜入欧の旗のもと、西洋列強の帝国主義の掟に合わせて軍事力を競い抜いた77年の歩みは、大東亜戦争の敗戦によって幕を閉じました」と、戦前の日本の歩みについて言及しています。さらに「その中で行われた幾多の戦いにおいて、祖国と家族を護るため、尊き命を捧げ、散華された英霊の御霊に対し、私たちは心から哀悼と感謝の誠を捧げます」と、国のために犠牲となった人々への追悼の意が表明されました。

しかし、談話の終盤に記述された「この節目の年、参議院議員選挙が行われ、長らく戦後日本の政治を牽引してきた自民党が、結党以来初めて衆参両院で過半数を割りました」という部分が、大きな問題を引き起こしました。この「結党以来初めて」という表現が、歴史的事実と異なるとして、SNS上で多くの指摘が殺到したのです。

終戦記念日に靖国神社を参拝する大勢の人々終戦記念日に靖国神社を参拝する大勢の人々

「初の衆参過半数割れ」の歴史的誤謬

参政党が「結党以来初めて」と主張した自民党の衆参両院での過半数割れは、実際には過去に複数回発生しています。

最初の事例は、1993年の衆議院議員総選挙です。当時の自民党は、定員511議席に対し223議席しか獲得できず、単独過半数に達しませんでした。その前年、1992年の参議院議員選挙でも、定員252議席中107議席にとどまっており、この時点で衆参ともに自民党が過半数を割る状態となっていました。この結果、1993年には日本新党の細川護熙代表を首班とする「非自民・非共産」の連立内閣が誕生し、自民党は一時的に野党に転落しました。その後、1994年以降は連立政権の形で与党の座に復帰しましたが、これは単独での過半数維持ではありませんでした。

次の大きな転換点は、2000年代後半に訪れます。2005年の小泉純一郎首相による「郵政解散」では、自民党は衆議院で単独過半数を大きく上回る296議席(定員480)を獲得し大勝しました。しかし、2007年の参議院議員選挙、そして2009年の衆議院議員総選挙で自民党は大敗を喫し、再び衆参両院で過半数を割り込む状態となりました。この時には自民党単独だけでなく、連立を組んでいた公明党と合わせても過半数に届かず、完全に下野することになります。この結果、民主党を軸とする「非自民」政権が誕生し、これは自民党が政権を奪還する2012年の衆議院議員総選挙で単独過半数の294議席を獲得するまで続きました。

これらの歴史的事実から、2025年が自民党にとって「結党以来初めて」衆参両院で過半数を割る年ではないことは明白です。

SNSでの批判と専門家の指摘

参政党の「終戦80年談話」におけるこの歴史的誤謬に対し、X(旧Twitter)上では「衆参両院で過半数割ったって別に初めてじゃなくね?」「たった16年前の事ですら正しい歴史認識を持てない人たち」といった、呆れや批判の声が相次ぎました。

ジャーナリストの畠山理仁さんも、談話の「2025年に自民党が結党以来初めて衆参両院で過半数を割った」という記述を引用しつつ、「参政党さん、間違っていませんか。さすがに『民主党政権はなかった』とまでは言わないと思いますが」と厳しく指摘しました。これらの反応は、政治を担う存在が発信する情報には、特に歴史的事実において正確性が求められるという社会の共通認識を改めて浮き彫りにしています。

結論

参政党が発表した「終戦80年談話」に歴史的事実の誤りが含まれていたことは、公党が発信する情報の信頼性、そしてその情報が社会に与える影響の大きさを改めて示すものです。特に歴史認識や政治の節目に関する発言は、その正確性が厳しく問われるべきであり、今回の事例は、情報発信における綿密な事実確認と、それを通じたE-E-A-T(専門性、経験、権威性、信頼性)の重要性を浮き彫りにしました。正確な歴史認識は、過去から学び、未来を築く上で不可欠な基盤であり、全ての政治勢力に求められる責務と言えるでしょう。


参考文献: