高市早苗氏が自民党新総裁に就任し、新たな政権の舵取りを任されたばかりだが、その前途は早くも多難を極めている。公明党からの連立政権離脱通告という衝撃的な事態に直面し、高市総裁は国民への説明と党内の結束を迫られている状況だ。特に今後の国会運営において野党との協力が不可欠となる中、政権の安定性そのものが問われている。掲げた「挙党一致」の理想とは裏腹に、党内には不和の種が燻り、首相指名選挙という重要な局面を前に、自民党は未曾有の危機に瀕している。
高市早苗総裁、就任直後の難しい政局運営に直面
公明党の連立離脱が突きつける現実と高市総裁の謝罪
10月14日、自民党両院議員懇談会において、高市早苗総裁(64)は公明党からの連立政権離脱通告の経緯を所属国会議員に説明し、「私の責任だ。お詫び申し上げる」と陳謝した。この懇談会は1時間半に及び、参加議員19人が発言する中で、今後の国会運営における野党協力の重要性が繰り返し強調されたという。高市総裁は「安定した政権をつくっていくことが国家・国民のために重要だ」と述べ、連立の組み替えを視野に入れていることを示唆した。これは、新政権が発足早々、与党としての基盤を揺るがす重大な危機に直面していることを物語っている。
混迷深まる「総理・総裁分離」案の浮上
懇談会では、高市氏の首相選出が不確実な現状を踏まえ、「総理・総裁分離」という異例の提案が浮上した。この案は、石破茂首相(68)が首相の座にとどまり政権運営を継続する一方、高市氏が新総裁として党内の体制を整えるというものだ。船田元元経済企画庁長官(71)が提唱し、大岡敏孝衆議院議員(53)も賛同したこの提案の背景には、石破首相が辞任しなければ首相指名選挙が行われないという制度上の特例がある。提案者たちは、臨時国会召集日においても首相指名選挙を急がず、まずはガソリンの暫定税率廃止法案など物価高対策の緊急法案を成立させるべきだと主張。その間に高市氏が野党との交渉を進め、首相指名選挙で確実に勝利できる体制を整えるべきだとした。しかし、この奇策とも言える提案に対し、懇談会内では否定的な雰囲気が支配的だったという。
「挙党一致」の裏に燻る不満と怪文書の波紋
高市総裁は「挙党一致」を掲げて新総裁に就任したものの、党内には依然として対立の火種が燻っている。石破政権下では非主流派であった麻生太郎副総裁(85)や萩生田光一幹事長代行(62)が新執行部入りし、主流派と非主流派が入れ替わる形で党内対立は続いている。にもかかわらず、懇親会では高市総裁の責任を問う声はほとんど上がらず、批判的な意見も出なかった。これは、1999年から連立を組んできた公明党が離脱し、政権与党からの転落という瀬戸際に立たされている現状において、「執行部の批判をしている場合ではない」という党全体の強い危機感の表れだと分析される。
しかし、水面下では別の動きもあった。懇談会と同時期に、「造反議員」として26人の名前が挙げられた「怪文書」が出回り、首相指名選挙で立憲民主党などと共に公明党の斉藤鉄夫代表(73)を担ぎ、自民党が下野するシナリオが3パターン示されていたという。自民党ベテラン秘書は、「首相指名選挙は記名投票であり、離党を覚悟しなければ他党の代表を書くことは難しい」と述べ、大量造反となる可能性は低いとしながらも、「怪文書は高市氏の人事や政治手法への不満の表れだろう」と、党内の不和が燻っている事実を指摘した。
日本維新の会との連携が孕むリスクと党内の亀裂
公明党の連立離脱後、各党は新たな連携を模索し始めた。10月15日には日本維新の会、立憲民主党、国民民主党の3党代表が会談したが、基本政策で折り合わず合意には至らなかった。しかし翌16日、立憲民主党と公明党の幹事長会談が行われ、公明党が野党勢に加わる可能性が明らかになったことで、公明党・斉藤氏を首相指名し、立憲・公明・国民でまとまるという怪情報も現実味を帯び始めた。
一方で、自民党も16日、日本維新の会と党首同士の政策協議を実施。会談後、維新の吉村洋文代表(50)は「政策協議がまとまれば維新が高市氏に票を投じる」と表明し、高市総裁が女性初の首相となる可能性が出てきた。しかし、この維新との接近は新たな地雷を埋めることにもなりかねない。大阪を地盤とする元衆議院議員は、「維新と組めば、自民党大阪府連は『維新と組むために我々は切り捨てか』と党内に禍根を残すだろう」と匿名で語る。大阪の自民党員は「維新に任せられないから支持する」という層が多く、連立を組めば党員離れが進むと懸念されている。さらに、維新との接近は、大阪選挙区で維新の現職に苦杯を嘗めさせられてきた公明党との距離を一層広げることにも繋がる。
新政権の行く末:内閣不信任案と衆院解散の影
臨時国会は21日に召集されるものの、首相指名選挙の具体的な実施日は未定のままだ。196人の自民党国会議員が「一枚岩」となってこの選挙を迎えられるのかは不透明であり、高市執行部の行く末には不安がつきまとう。万が一、会期中に高市氏が立ち往生すれば、立憲民主党が内閣不信任案を提出する可能性が高い。内閣不信任案は、首相指名で協力的でなかった共産党やれいわ新選組も賛同しうるため、可決されれば10日以内に衆院解散か内閣総辞職の選択を迫られることになる。もし解散となれば、公明党の選挙協力がない中で、多くの自民党議員が永田町に戻れるかは極めて難しい問題となるだろう。
現状の高市執行部は、永田町で「羽田超えなるか」と揶揄されている。1994年4月28日に発足した羽田孜政権の在任日数はわずか64日間であり、新政権がそれを超えることができるか、注目が集まっている。こうした状況下で、「閣僚経験が豊富で、『政界の火消し役』の異名を持つ林芳正官房長官(64)の名前も取り沙汰されている」(自民党ベテラン秘書)という話も聞かれる。高市氏が選任されたばかりの総裁選は、いったい何だったのかと、国民の間に疑問が広がっている。
参考文献
- FRIDAYデジタル
- Yahoo!ニュース (記事掲載元)