米首都ワシントン特別区の司法長官は2025年8月15日、ドナルド・トランプ政権が首都警察(MPD)を「敵対的に乗っ取った」として連邦地方裁判所に提訴しました。この訴訟は、連邦政府による地方政府の権限侵害に対する異例の法廷闘争として注目されています。
トランプ政権による首都警察への介入の経緯
今週、共和党のトランプ米大統領は、首都警察を連邦政府の管理下に置く方針を打ち出し、さらに首都へ800人の州兵を動員しました。これに続き、パム・ボンディ米司法長官は8月14日、麻薬取締局(DEA)長官を「緊急」の首都警察本部長として任命しました。これらの行動は、首都ワシントンD.C.の地方自治権を巡る深刻な対立を引き起こしています。
2025年8月15日、米ワシントン連邦地方裁判所の外でスピーチを行うブライアン・シュワルブ首都ワシントン司法長官。首都警察の連邦政府による「乗っ取り」を巡り、トランプ政権を提訴した際の様子。
ブライアン・シュワルブ司法長官の主張と法的根拠
首都ワシントンのブライアン・シュワルブ司法長官は、連邦裁判所への訴状の中で、連邦法は「このような大胆な地方政府の権限の簒奪(さんだつ)を認めていない」と明確に述べました。シュワルブ司法長官は、「被告(トランプ政権)は、指揮系統の地位を占め、MPDに政策指令を発するなどして、MPDの運用管理を不法に掌握している」と非難しています。彼は裁判所に対し、ボンディ司法長官の命令の一時的な差し止めや、トランプ大統領の行為がコロンビア特別区(ワシントンD.C.)に対する権限を逸脱していると宣言するよう求めています。
ワシントンD.C.市長の反論
民主党のミューリエル・バウザー・ワシントン市長もこの動きに強く反発しています。バウザー市長は8月14日遅く、「連邦政府高官に特別区の人事権を付与する法律は存在しない」と述べ、トランプ政権の行動が法的な根拠を欠いていることを強調しました。この発言は、首都の自治権を守る姿勢を示すものです。
今回の提訴は、連邦政府と地方政府間の権限を巡る重要な法的争点を示しており、今後の裁判所の判断が注目されます。これは、アメリカにおける州権と連邦権力のバランス、そして民主主義の原則に関わる、極めて重要な事態と言えるでしょう。
参考文献
- [AFP=時事] 米ワシントン司法長官、トランプ政権を提訴 首都警察「乗っ取り」で. (2025年8月16日). https://news.yahoo.co.jp/articles/2d3940f0b490f054bd1a5e9f90d3fed95328eb5d