「キャンプ用品は災害時に役立つ」という認識は広く持たれています。電気、ガス、水道が止まった際にもキャンプの知識があれば乗り切れる、と考える人も少なくありません。しかし、人気ソロキャンパーであるお笑い芸人ヒロシ氏に話を伺うと、その見解は一般的なものとは異なりました。彼が考える本当に役立つ防災グッズ、そして災害対策の核心とは一体何でしょうか。
サバイバルとキャンプは本質的に異なる
災害時に役立つキャンプスキルについて、ヒロシ氏は「キャンプをやっていると防災に役立つという考えは、こじつけだと思っている」と語ります。確かに、キャンプを始めた頃は「災害時に備えて」と火おこし道具などを詰め込んだザックを用意したこともあったそうですが、彼は「災害の時にまちなかで焚き火はしないし、都会の池で魚を釣って食べることもない」と指摘します。これは、レジャーであるキャンプと、非常時の生存を目的としたサバイバルが混同されている実態を示しています。
もちろん、キャンプ道具が災害時に全く使えないわけではありません。例えば、避難所となった体育館で寝袋があれば暖を取れ、マットを敷けば硬い床の不快感を軽減できるでしょう。しかし、ヒロシ氏は「見知らぬ人が大勢いる環境が苦手なため、自宅が倒壊しない限りは家にいるのがベスト」と在宅避難の重要性を強調します。その場合、普段使っている布団で十分であり、災害の内容によって備えも異なると述べ、一概にキャンプ用品が万能ではないことを示唆しています。
都市部での災害時、焚き火や釣りが現実的ではないことを指摘するヒロシ。サバイバルとキャンプを混同しない重要性。
都市型災害で最も重要な「水」の確保
特に都市部においては、建物が無事でも電気・水道・ガスといったライフラインが寸断され、復旧まで数日間から一週間程度を自力で凌がなければならない状況が想定されます。このような都市型災害において、ヒロシ氏がキャンプをしない人にも強く推奨する防災グッズの一つが「携帯浄水器」です。
災害時に最も重要だとヒロシが推奨する携帯浄水器。きれいな飲料水の確保は生存の鍵。
彼は「最終的には水。水がないと死ぬ」と断言し、飲料水の確保がいかに生存に不可欠であるかを訴えます。携帯浄水器は、一見きれいな川の水でも含まれている可能性のある大腸菌などをフィルターで除去し、安全な飲料水を得ることを可能にします。様々なメーカーから販売されており、コンパクトで持ち運びやすい点も特長です。
焚き火の前でくつろぐソロキャンパー芸人ヒロシ。キャンプ用品が災害時に役立つかについて語る。
災害への備えは現実的な視点と優先順位が鍵
ヒロシ氏の言葉から見えてくるのは、「キャンプ用品が災害時に役立つ」という表面的な認識から一歩踏み込み、より現実的かつ具体的な視点で防災を考えることの重要性です。全てのキャンプ用品が災害に直結するわけではなく、何よりも命に関わる「水」の確保、そして在宅避難を想定した日用品の備蓄など、状況に応じた優先順位をつけた準備が不可欠です。災害対策においては、いかに冷静に、そして本質的なニーズを見極めるかが、私たち自身の命を守る鍵となるでしょう。
防災とキャンプの違いについて語るヒロシ。災害時の備えには状況に応じた判断が重要。