霞が関が戦々恐々とした
田﨑 官邸に目を向けると、石破政権よりも力強い布陣と言えます。まず、首席秘書官に起用された元経産次官の飯田祐二さん。経産省OBによれば、バランス感覚に優れていて、歴代の中でも名次官の1人。進次郎さんが総理になっていても、首席秘書官に選ばれたであろう優秀な方です。首席秘書官は政策全般への目配りが求められ、財務省の次官経験者ですら勤め上げるのは難しい。経産次官として民間や他省庁との交流も深い飯田さんはピッタリです。
秘書官では、財務省出身の吉野維一郎さんに注目です。当初は平成6年入省の吉沢浩二郎主計局次長が本命視されていましたが、高市さんから、「もっと年次の高い人を出してほしい」との要望があり、一期先輩で、主計局次長の吉野さんに白羽の矢が立った。自民党だけでなく、立憲民主党をはじめ、野党議員にもパイプがあり、調整能力には定評があります。
中北 高市さんは安倍官邸を相当意識していますね。安倍政権で首席秘書官を務めた今井尚哉さんが内閣官房参与になりましたし、飯田さんは経産省時代、今井さんのラインにいたとされます。当初は安倍政権で内閣情報官を務めた北村滋さんの官邸入りや、安倍総理の秘書官だった経産省の佐伯耕三さんが首席秘書官に就くとの噂も流れていました。
田﨑 「ここまでやるか」と思ったのは国家安全保障局(NSS)の岡野正敬局長を在任わずか9カ月で退任させ、後任に市川恵一前官房副長官補を起用したこと。市川さんは外務官僚として安倍さんの外交戦略「自由で開かれたインド太平洋」の立案に携わりましたが、岡野さんの退任は極めて異例の人事。これには霞が関も戦々恐々でしょう。「総理の意に添わなければ更迭されるのか」と。
自民党税調の人事にも驚かされました。会長を宮沢洋一元経産相から小野寺五典元防衛相に代えましたが、官邸が税調会長人事に手を突っ込むのは、2015年、軽減税率導入に消極的だった野田毅さんを交代させた安倍さん以来です。
中北 さらに、「インナー」と呼ばれる税調幹部には、西村康稔元経済産業相や山際大志郎元経済財政・再生相ら積極財政派を起用した。これも高市さんの意向でしょう。
