近年、地方公務員の給与水準に対する関心が高まっています。特に、全国平均と比較して年収が低いとされる自治体はどこなのか、その背景にはどのような要因があるのかは、多くの人々が注目するテーマです。本稿では、「公務員の年収が高い自治体ランキング」に続き、総務省が公表する最新のデータに基づいた「地方公務員の年収が低い自治体ランキング」を詳細に分析し、その実態と多岐にわたる要因を掘り下げます。地域ごとの財政状況、地理的特性、そして職員構成が給与水準にどのように影響を与えているのかを解説することで、日本の地方行政における給与の現状と課題を明らかにします。
地方公務員の給与算出方法と実態調査の概要
地方公務員の平均給与額は、総務省が毎年実施する「地方公務員給与実態調査」に基づいて算出されています。この調査は、諸手当を含む平均給与月額の12カ月分に、期末手当および勤勉手当(年間支給額)を加えて年収として算出するものです。直近のデータは2024年4月1日時点のものであり、前年からの変動も併記されています。ただし、地域によって支給額が大きく異なる寒冷地手当は、平均年収の算出には含まれていません。この算出方法は、全国の地方公務員の給与水準を比較するための統一的な基準を提供し、透明性の高い情報公開を可能にしています。
平均年収が低い自治体トップ3:離島・山間部の小規模自治体が上位に
「公務員の年収が低い自治体ランキング」において、上位には人口の少ない離島や山間部の小規模自治体が多数ランクインしています。
栄えある1位は、沖縄県・渡名喜村で平均年収は433.2万円でした。渡名喜村は那覇市の北西に位置する離島の村で、行政区域は有人の渡名喜島と無人の入砂島から構成されています。特に、入砂島はNHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」のオープニング映像に登場したことで全国的な知名度を誇ります。
続く2位は同じく沖縄県の多良間村で447.3万円、3位には山梨県の小菅村が447.5万円でランクインしています。これらの自治体に共通するのは、地理的な特性として離島や山間部に位置している点、そして比較的小規模な行政単位である点です。
日本の地方公務員の年収が低い自治体ランキングを示す地図とデータ
小規模自治体で年収が低い要因:人口減少、地域手当、級構成
地方公務員の年収が低い自治体が小規模な離島や山間部に集中する背景には、複数の複雑な要因が絡み合っています。
まず、日本全体で深刻化する人口減少は、特に小規模自治体の職員構成に大きな影響を与えます。職員の級構成、すなわちベテラン職員の比率や、新規採用および退職のタイミングによって、全体の平均給与が大きく変動しやすい傾向があります。若手職員の比率が高い場合や、経験豊富な職員の退職が重なる時期には、平均年収が相対的に低くなることがあります。
次に、地域手当の影響が挙げられます。地域手当は、都市部など特定の地域における物価水準や生活費の違いを考慮して支給される手当であり、地方によってはこの手当が低いか、あるいは全く支給されない場合があります。地域手当が低く抑えられると、諸手当込みの平均給与月額が全国平均よりも低くなり、結果として期末手当や勤勉手当の支給額も相対的に小さくなるため、年収全体が低水準にとどまりがちです。
これらの条件が重なることで、該当する自治体の公務員の年収水準は、全国平均と比較して下位に位置する傾向が見られます。一方で、近年では人材確保の重要性が高まる中、一部の自治体では給与改定などの措置を講じ、前年よりも平均年収がプラスに転じた事例も散見されます。これは、人材流出を防ぎ、質の高い行政サービスを維持しようとする自治体の努力の表れと言えるでしょう。
まとめと今後の展望
本稿では、総務省のデータを基に、日本の地方公務員の年収が低い自治体ランキングとその要因について深く掘り下げました。沖縄県の渡名喜村を筆頭に、離島や山間部の小規模自治体が上位を占める傾向が明らかになり、その背景には人口減少による職員構成の変化、地域手当の有無や水準といった構造的な問題が存在することが分かりました。
これらの課題は、単に個々の公務員の生活水準に影響を与えるだけでなく、地方における行政サービスの質や、地域活性化の取り組みにも直結します。地方公務員の給与水準は、その地域で働くことの魅力や、優秀な人材を引きつける上での重要な要素です。今後、各自治体が持続可能な形で地域を運営していくためには、これらの給与構造の課題にどう向き合い、どのような人材戦略を立てていくかが鍵となるでしょう。
地方公務員の年収が低い自治体ランキングTOP500
- 1〜25位
- 26〜50位
- 51〜75位
- 76〜100位
- 101〜125位
- 126〜148位
- 151〜175位
- 176〜200位
- 201〜225位
- 226〜250位
- 252〜275位
- 277〜300位
- 301〜325位
- 327〜349位
- 351〜374位
- 377〜398位
- 401〜425位
- 427〜450位
- 451〜475位
- 476〜500位
参考資料
- 東洋経済オンライン編集部. (2025年8月16日). 「公務員の年収」が低い自治体ランキング 5位は東京都青ヶ島村、4位は沖縄県渡嘉敷村、ではトップ3は?. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/a62bcfb931804486c513a47aaa668353d07027c4
- 総務省. 地方公務員給与実態調査.