米国株式市場が記録的な高値圏で推移する中、8月に開催されるジャクソンホール会合で米金融当局者が「ハト派的」なシグナルを発した場合、投資家が利益確定売りに動きやすい状況にあると、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらが警告しています。この分析は、市場参加者が注目する今後の金融政策の方向性に対し、一石を投じるものです。
楽観論が牽引するリスク資産への資金流入
BofAのマイケル・ハートネット氏率いるチームの分析によれば、現在の市場の楽観的な見方は、米連邦準備制度理事会(FRB)が労働市場の支援と米国の債務負担軽減のため、将来的に金利を引き下げるとの期待に基づいています。この期待感が背景となり、投資家は株式、暗号資産(仮想通貨)、社債といったリスク資産への資金流入を加速させてきました。FRBの金融政策が市場のムードを形成する上で、極めて重要な役割を担っていることが改めて浮き彫りになっています。
ジャクソンホールでのハト派発言が引き起こす市場の動き
8月21日から23日にかけてワイオミング州で開催されるカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム、通称「ジャクソンホール会合」は、世界の金融市場にとって重要なイベントです。この会合でパウエルFRB議長が市場の予想以上にハト派的な発言を行った場合、投資家は「うわさで買って事実で売る(buy the rumor, sell the fact)」という行動に出る可能性があり、その結果、株価が下落するリスクがあるとハートネット氏は指摘しています。市場はすでにFRBの金融緩和を織り込んでいるため、実際に緩和的な発言が出たとしても、それが新たな買い材料にはならず、むしろ利益確定のきっかけとなりかねないという見方です。
金融市場のボラティリティを示すチャートとブルームバーグのロゴ、ジャクソンホール会合への関心
ハートネット氏の市場見通しと実績
マイケル・ハートネット氏は、現在の市場環境において、米国株よりも世界株を選好する姿勢を改めて示しています。同氏の見方は今年に入ってからの市場の動きにおいて、これまでのところ的中しており、その分析の信頼性が高まっています。ジャクソンホール会合でのFRBのスタンス表明は、今後の世界的な株式市場、特に米国株の動向を左右する重要な要因となるでしょう。投資家は、今回の会合での発言内容を慎重に見極める必要があります。
今回のBofAの警鐘は、記録的な高値圏にある米国株市場に対する潜在的なリスクを示唆しています。ジャクソンホール会合でのFRBのメッセージは、市場の短期的な動きだけでなく、中長期的なトレンドにも影響を与える可能性があり、その動向から目が離せません。
参考文献
- Bloomberg (2025). BofA’s Hartnett Sees Profit-Taking in Stocks After Jackson Hole. (抜粋)