最近の米露首脳会談は、その内容の多くがベールに包まれたままであったが、トランプ氏が求めるウクライナでの即時停戦が実現せず、プーチン氏が交渉の主導権を握っていたことは明らかです。会談でプーチン氏がどのような要求を突きつけたのか、その全体像が徐々に明らかになっています。
ロイター通信が報じたプーチン氏の主要提案
ロイター通信は16日、「戦争終結に向けたプーチン大統領の提案」として、以下の具体的な条件を報じました。
まず、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州・ルハンシク州)からウクライナ軍が完全に撤退すること。これと引き換えに、ロシア軍は南部ヘルソン州とザポリージャ州で前線を凍結し、さらに北東部スムイ州とハルキウ州で占領している小規模な地域を返還する用意があるとされます。
次に、クリミア半島に関するロシアの主権をウクライナが承認することが条件に含まれています。また、ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)への非加盟を約束する必要がありますが、これとは別の形で安全保障の仕組みを持つことは可能だと示唆されています。
経済面では、ロシアに対する経済制裁の一部解除が要求されました。文化的な側面では、ウクライナ全土または一部でロシア語の公用語化、そしてウクライナにおいてロシア正教会が自由に活動する権利が挙げられています。
ウクライナが直面するドンバス撤退要求の重圧
プーチン大統領とトランプ大統領、米露首脳会談で顔を合わせる様子。ウクライナ停戦交渉の行方が注目される。
米ニューヨーク・タイムズ(16日)によると、トランプ大統領は欧州の首脳らに対し、東部ドンバス地方全域をロシアに明け渡せば戦闘を停止するというプーチン氏の停戦案を支持する考えを伝えたとされます。その見返りとして、プーチン氏はウクライナの残りの地域での停戦と、ウクライナおよび欧州諸国への再侵攻を行わないことを書面で約束すると報じられました。
ドンバス地方からの撤退は、ウクライナにとって極めて重い意味を持ちます。現在、ロシア軍はルハンシク州のほぼ全域を支配していますが、ドネツク州の支配地域は7割にとどまっています。ウクライナ軍は残り3割の地域を「要塞化」し、必死の抵抗で守り続けており、これをロシアに引き渡すことは簡単には受け入れられない条件です。
ウクライナのゼレンスキー大統領、ドンバス地方からの軍事撤退要求に対し、毅然とした態度を示す。
米戦争研究所(16日)は、仮にドンバス地方が引き渡された場合、数十万人ものウクライナの民間人がロシアの占領下に置かれることになると指摘しています。また、要塞地域を失うことでウクライナの防御力が低下し、その後のロシア軍による再侵攻が容易になる危険性も指摘されています。
ドンバス地方からの撤退要求をめぐり、ゼレンスキー大統領は一貫して拒否する構えを見せています。ロイター通信によると、17日には改めて、現在の戦線こそが交渉のスタートラインであると述べました。領土をめぐる駆け引きは複雑であり、停戦に向けた道のりは依然として不透明な状況が続いています。
参照元
- ロイター通信
- 米ニューヨーク・タイムズ
- 米戦争研究所 (ISW)