子どもが成人を迎えるにあたり、これまでの貯蓄を「そろそろ渡そうか」と考える親は少なくありません。しかし、まとまった金額を譲渡する際には「贈与税」が発生する可能性があるため、注意が必要です。「申告しなければ発覚しないのでは?」という誤解を抱く方もいらっしゃいますが、それは大きな間違いです。本記事では、500万円を子どもに贈与した場合の税額、無申告のリスク、そして税負担を軽減するための合法的な方法について、専門家の視点から詳しく解説します。
親が成人した子どもに貯金の通帳を渡す様子。贈与税の基礎知識と注意点。
500万円を渡した場合の贈与税額は?
贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、暦年課税における基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対して課されます。特定の非課税枠(住宅取得資金や教育資金の一括贈与など)を利用しない場合、500万円を一括で贈与すると、課税対象額は500万円-110万円=390万円となります。
今回のケースでは、子どもが成人しているため「特例税率」が適用されます。課税価格が390万円の場合、税率は15%、控除額は10万円です。これを基に計算すると、390万円×15%-10万円=48万5000円となり、この金額が贈与税として発生します。
「申告しなければ発覚しない」は真実か?
結論から申し上げると、発覚する可能性は非常に高いと言えます。その理由は、銀行口座の取引履歴はすべて金融機関に記録されており、税務署が必要に応じて確認できるからです。
今回のケースは「子ども名義の通帳を渡す」というものですが、「手渡しだから追跡は難しいだろう」「ばれないだろう」と安易に考えるのは大変危険です。実際、国税庁が公表した「令和元年事務年度における相続税の調査等の概況」内の「贈与税に対する調査状況」によると、贈与税の申告漏れの中で「現金・預貯金」が75.7%と最も高い割合を占めています。
また、親の口座から子どもの口座へ一度に500万円といった多額の資金が振り込まれた場合、金融機関が不正取引防止の観点から確認を行うケースもあるため、注意が必要です。もし申告せずに発覚した場合、本来納めるべき税額に加え、無申告加算税や延滞税が課されることになり、税負担はさらに増大します。
500万円を一度に贈与すると贈与税が高額になりますが、複数年に分けて贈与する方法を採ることで課税額を抑えることが可能です。例えば、毎年110万円以内(基礎控除額内)に抑えて贈与すれば、原則として贈与税はかかりません。
ただし、形式的に毎年110万円以内であっても、毎年同じ時期に同じ金額を渡すような「定期贈与」とみなされると、数年分をまとめて課税されるリスクがあります。そのため、贈与の金額や時期に変化をつけるなど、計画的な実行が求められます。
まとめ
成人した子どもに500万円を贈与する場合、贈与税は約48万5000円かかることがお分かりいただけたでしょう。「申告しなければ発覚しない」と考えていても、金融機関や税務署の調査により高い確率で発覚するため、注意が必要です。無申告のまま発覚すれば、加算税や延滞税が加わり、さらに負担が増す可能性があります。
贈与は、正しい手続きと計画的な方法を採れば、税負担を減らしながら適切に行うことができます。安心して財産を渡すためにも、国税庁の情報を確認し、必要に応じて税理士に相談することをおすすめします。
情報提供元: FINANCIAL FIELD編集部 ファイナンシャルプランナー