共働き夫婦の老後設計:年収300万円妻と700万円夫の年金受給額を徹底解説

共働き世帯が増える現代において、老後の生活を具体的に描く上で、夫婦それぞれが将来受け取る年金額を把握することは極めて重要です。特に、収入に差がある場合、2人分の年金合計額が老後の生活を支える基盤となります。しかし、「私たちの場合、一体いくら年金がもらえるのか」という疑問や不安を抱えている方も少なくないでしょう。本記事では、年収300万円の妻と年収700万円の夫というモデルケースを取り上げ、それぞれ会社員として40年間勤務したと仮定した場合の、将来受け取れる年金額の目安を詳細に解説します。

夫婦の年金受給額と老後資金計画に関する概念イメージ夫婦の年金受給額と老後資金計画に関する概念イメージ

日本の公的年金制度の基本構造:二階建ての仕組み

日本の公的年金制度は、「二階建て構造」と称されます。これは、全ての国民が共通で加入する基礎部分と、会社員や公務員が加入する上乗せ部分から成り立っているためです。

全国民が加入する「国民年金」(老齢基礎年金)

公的年金制度の1階部分は、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する「国民年金」、その給付が「老齢基礎年金」です。令和7年度における老齢基礎年金の満額は年間83万1696円(月額約6万9308円)とされています。この満額を受け取るためには、原則として20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)、国民年金保険料を全額納付している必要があります。未納期間や免除期間がある場合は、その分受給額が減額されます。

会社員・公務員が加入する「厚生年金」(老齢厚生年金)

2階部分に位置するのが「厚生年金」、その給付が「老齢厚生年金」です。これは会社員や公務員が加入する年金で、支払った保険料、すなわち収入に応じて将来受け取れる年金額が変動します。一般的に、現役時代の年収が高い人ほど多くの厚生年金保険料を納めるため、将来受け取る老齢厚生年金も高額になります。これは、個人の所得に比例して老後の所得保障を手厚くするという考え方に基づいています。

年収別シミュレーション:夫婦の年金受給額を具体的に試算

ここでは、年収300万円の妻と年収700万円の夫が、それぞれ40年間厚生年金に加入し続けたケースを想定し、具体的な年金額の目安を試算します。厚生年金の計算式は複雑ですが、簡略化された目安の計算式を用いることで、おおよその受給額を把握することができます。

計算の前提と方法

試算には、平成15年4月以降の加入期間に適用される簡略化された計算式を使用します。これは、「平均標準報酬額×0.005481×加入月数(480ヶ月)+国民年金部分」という形式で求められます。平均標準報酬額とは、現役時代の平均的な給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)を合計したもので、年金計算の基礎となります。

妻(年収300万円)の場合の試算

年収300万円の場合、月額は約25万円となります。厚生年金保険料計算の基準となる平均標準報酬月額は、この年収レベルで「26万円(標準報酬月額等級20)」が適用されることが多いです。

  • 厚生年金部分の目安: 26万円(平均標準報酬月額) × 0.005481 × 480ヶ月 = 約68万4028円
  • 国民年金部分(満額): 83万1696円
  • 妻の年金合計目安: 約68万4028円 + 83万1696円 = 約151万5724円

夫(年収700万円)の場合の試算

年収700万円の場合、月額は約58万3000円となります。この年収レベルでは、平均標準報酬月額は「59万円(標準報酬月額等級33)」が適用されることが多いです。

  • 厚生年金部分の目安: 59万円(平均標準報酬月額) × 0.005481 × 480ヶ月 = 約155万2219円
  • 国民年金部分(満額): 83万1696円
  • 夫の年金合計目安: 約155万2219円 + 83万1696円 = 約238万3915円

夫婦合計での年金受給額

上記の試算結果を合計すると、年収300万円の妻と年収700万円の夫が、それぞれ40年間会社員として勤務した場合の夫婦合計年金受給額の目安は以下のようになります。

  • 夫婦合計年金目安: 約151万5724円(妻) + 約238万3915円(夫) = 約389万9639円

このケースでは、年間で約390万円弱の年金収入が期待できる計算になります。

まとめ:老後資金計画の第一歩として

今回のシミュレーションでは、年収300万円の妻と年収700万円の夫というモデルケースにおいて、夫婦合計で年間約390万円弱の年金を受給できる可能性があることが分かりました。この金額は、あくまでも簡略化された計算に基づく目安であり、実際の受給額は加入期間中の正確な平均標準報酬額や制度改正によって変動する可能性があります。

しかし、このような具体的な試算を行うことで、老後の生活費を賄うための公的年金の基礎部分がどの程度になるのかを把握し、不足する可能性のある生活費を補うための貯蓄や資産形成の必要性を認識する第一歩となります。老後の安心した生活設計のためには、年金の受給額を理解し、それを基盤とした長期的な資金計画を立てることが不可欠です。


参考文献

  • 日本年金機構の公的年金制度に関する情報に基づき作成