誰しもが抱える悩みや不安。特に寝る前に嫌なことを思い出してしまい、眠れなくなるという経験は少なくないでしょう。多くの人が「あの記憶さえなければ楽になるのに」と考えがちですが、本当にそうなのでしょうか?ベストセラー作家であり精神科医のTomy氏は、著書『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の中で、私たちの苦しみを長引かせる“心のクセ”と、それから解放されるための画期的な視点を提示しています。本記事では、Tomy氏の深淵な言葉から、辛さの根本原因と、そこから抜け出すための具体的なアプローチを探ります。
精神科医Tomyの著書『1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』の表紙画像
精神科医Tomyが解き明かす「気分」と「辛い記憶」の関係
精神科医Tomy氏の核心的なメッセージは、「辛い時というのは、『辛いことを思い出して辛くなる』のではなく、『辛い気分になっているから、辛いことを思い出す』」というものです。私たちはとかく、特定の嫌な記憶が現在の苦しみを生み出していると考えがちですが、Tomy氏はその因果関係が逆である可能性を指摘します。つまり、原因は過去の記憶そのものよりも、現在の心の状態、すなわち「気分」にあるというのです。
「嫌な記憶」が苦しみを長引かせるという誤解
多くの人が「嫌な記憶があるからこそ辛いんだ」と感じています。しかし、実際には「辛い気分でいるからこそ、それに合致する辛い記憶が次々と頭に浮かんでくる」という心の動きが少なくありません。これは、私たちの脳が現在の感情や気分と一致する記憶を無意識のうちに探し出し、それを呼び起こすようにできているためです。したがって、特定の記憶が苦しみの根本原因であるという考え方は、時にその苦しみを長引かせる“心のクセ”であるとも言えます。
記憶を消しても意味がない?心のメカニズム
仮に、今あなたを縛り付けている嫌な記憶を完璧に消し去ることができたとしても、もし気分が落ち込んだままであれば、別の同様に嫌な記憶が頭に浮かんできてしまうでしょう。人の脳は、今の感情に沿った記憶を探索し、提示する機能を持っているからです。このメカニズムを理解することは、記憶そのものを変えようとするのではなく、現在の「気分」に焦点を当てることの重要性を示唆しています。
「今」の気分にアプローチする具体的な方法
苦しみを和らげたいと願うとき、重要なのは「どの記憶を消すべきか」ではなく、「今の自分の気分をどう変えていくか」という点に意識を向けることです。心の状態を変えるための行動は、決して大掛かりなものである必要はありません。例えば、少し散歩に出てみたり、お気に入りの音楽に耳を傾けたり、あるいは信頼できる友人と語り合ったりするような、ごく小さな行動でも、気分の転換につながることが多々あります。これらの小さなステップが、心の重荷を軽くする助けとなるのです。
特定の記憶に囚われず、心の状態を整える第一歩
辛さや苦しみは、特定の記憶によって一義的に決まるものではなく、「今の心の状態」によってその形を変えていきます。だからこそ、「あの記憶さえなければ…」と過去の出来事に過度にとらわれ続ける必要はありません。あなたが今できることは、過去をどうにかすることではなく、あなたの「今の気分」を少しずつでも良い方向に整えていくことです。この“気分”へのアプローチこそが、過去への囚われから自由になり、心の平穏を取り戻すための大切な第一歩となるでしょう。
精神科医Tomy氏の言葉は、私たちが日常で感じがちな心の迷いを解き放ち、より軽やかに生きるためのヒントを与えてくれます。この視点を取り入れることで、あなたは自身の心の状態をより深く理解し、前向きな変化を生み出すことができるはずです。
参考文献
- 本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。




