自民党の総裁選挙管理委員会が臨時総裁選の実施判断に向けて始動したことで、石破首相(党総裁)に退陣表明を促す圧力がいっそう強まっている。前倒しでの総裁選実施が決まれば事実上の退陣勧告となるため、党内では決定前に首相が自発的に判断を下すべきだとの意見が根強い。主要な外交日程に区切りがつく今月末以降、首相の決断の節目が訪れるとの見方も出ている。
総裁選管の始動と臨時総裁選の「重み」
総裁選管の逢沢一郎委員長は19日の会合後、臨時総裁選の是非を決めることの重みを「総裁の身分に関わることだ。厳正に慎重に責任を果たしたい」と記者団に強調した。
自民党において、総裁の自発的な辞任によらない臨時総裁選が実施された前例はない。党則6条4項に基づき総裁選を前倒しで実施することは、党からの不信任に等しく、「首相にとっても党にとっても汚点となる」(首相周辺)と懸念する声が多い。ある選管委員も「決定前に首相が自ら決断するのが一番だ」と本音を漏らしている。
首相官邸で記者団の質問に答える石破首相。退陣圧力が強まる中、その動向に注目が集まる。
首相の進退と外交日程の神経戦
今後、総裁選管の動きを睨みつつ、退陣を求める議員側と、外交日程などを考慮して進退表明の時期を見極める首相側の間で神経戦が繰り広げられる見通しだ。
総裁選管は、月末に見込まれる党の参院選総括の取りまとめを受け、所属議員らへの意思確認を開始する構えであり、9月上旬には結論を出すとみられる。臨時総裁選の前倒し決定には、所属国会議員と47都道府県連代表の総数の過半数の賛同が必要となる。しかし、閣僚経験者からは「直接的な退陣要求ではない。首相にも出馬する権利があるため、賛成するハードルは低いだろう」との見方が出ている。
もし総裁選管による実施の是非の決定前に首相が退陣を表明すれば、議員らへの意思確認などの手続きは不要となり、速やかに総裁選が行われることになる。
自民党本部で開かれた総裁選挙管理委員会の会合で挨拶する逢沢一郎委員長。臨時総裁選の実施判断に向けた協議が開始された。
主要外交日程の節目と党内情勢
参院選惨敗の責任を取るべきだと迫られてきた首相は、米国の関税措置への対応や首脳外交などに支障が出ないよう、これまで進退を明確にしてこなかった。しかし、関税交渉には一定の目処がつき、20日に開幕する第9回アフリカ開発会議(TICAD9)、23日の韓国の李在明大統領の来日、29日を予定するインドのナレンドラ・モディ首相の来日を終えれば、首相がホスト役を務める主要な外交日程も区切りがつく見込みだ。
首相が信頼を置く森山幹事長は、参院選総括に合わせた辞任を示唆しており、他の党四役もこれに追随する構えを見せている。これにより、政権運営が行き詰まる公算は大きい。党幹部の一人は、「首相が月末にも『責任を取る考えだったが、外交日程もあり明らかにできなかった』と説明すれば、きれいに身を引ける」と語り、スムーズな政権移行への期待も滲ませる。
結論
石破首相の進退は、自民党総裁選挙管理委員会の臨時総裁選実施判断と、主要な外交日程の完了という二つの大きな節目に直面している。党内外からの退陣圧力が高まる中、首相がどのような決断を下すのか、そのタイミングと形式が今後の日本の政治情勢を大きく左右することになるだろう。
Source: 読売新聞オンライン