MLBで「韓国人投手不在」が深刻化:日本・台湾との差と背景

2021年の韓国プロ野球界では、下位チームの順位争いが皮肉を込めて「シム・ジュンソク・リーグ」と呼ばれていました。これは、その年の最下位チームが翌年の新人ドラフトで、徳寿高校の「超有望株」シム・ジュンソク投手を獲得する可能性が高かったためです。しかし、シム・ジュンソク投手は韓国プロ野球ではなく、MLB(メジャーリーグ)挑戦を選択。高校生ながら160キロに迫る剛速球を投げ、2023年1月にはピッツバーグ・パイレーツと契約を結びました。

若手有望株の相次ぐ挫折

しかし、MLBでの3度目のシーズンを迎えていたシム・ジュンソク投手は、今年8月6日にマイアミ・マーリンズから放出される結果となりました。慢性的な肘と腰の負傷に苦しみ、マイナーリーグの中でも最下位のルーキーリーグを転々としましたが、最終的にユニフォームを脱ぐことになったのです。また、馬山ヨンマ高校出身のチャン・ヒョンソク投手も2023年8月にLAドジャースと契約して渡米しましたが、現在シングルAに留まっています。韓国プロ野球LGツインズを経て渡米したコ・ウソク投手も、MLBでのデビューは依然として困難な状況が続いています。

MLBから韓国人投手が姿を消す現状

韓国プロ野球界で絶大な人気を誇り、MLBでも活躍する金河成、李政厚、金慧成といった打者がいる一方で、野球ファンの間では「MLBから韓国人投手が消えた」ことへの無念さが広がっています。リュ・ヒョンジン投手が2023年9月30日にトロント・ブルージェイズのユニフォームを着てマウンドに上がったのが、MLBにおける韓国人投手の最後の登板記録となっています。

MLBにおける韓国人投手の現状を示すグラフィックMLBにおける韓国人投手の現状を示すグラフィック

日台との歴然たる差:日本勢の躍進と台湾の台頭

こうした状況の中、台湾では8月2日、サンフランシスコ・ジャイアンツの鄧愷威(テン・カイウェイ)投手がニューヨーク・メッツ戦に先発登板し、今季の「メジャーリーガー投手」保有国となりました。マイナーリーグにも約10人の台湾人投手が在籍しています。かつてはライバルと見なされていた日本は、すでに数段階先を行く存在です。投打二刀流で世界を驚かせる大谷翔平選手をはじめ、山本由伸投手、佐々木朗希投手(共にLAドジャース)、今永昇太投手(シカゴ・カブス)、千賀滉大投手(ニューヨーク・メッツ)など、MLBでエース級の活躍を見せる選手が多数います。現在、各球団の40人ロースター(登録枠)に登録されている日本人投手だけでも10人以上に上っています。

かつての栄光と現状の乖離

もともと、韓国人メジャーリーガーはそのほとんどが投手でした。1994年に韓国人として初めてMLBのマウンドを踏んだ「パイオニア」朴賛浩(パク・チャンホ)投手を筆頭に、2013年の林昌勇(イム・チャンヨン)投手まで、20年間でMLBデビューした韓国人選手14人のうち、実に12人までが投手だったのです。しかし、2015年から今年にかけてMLBに進出した韓国人選手13人のうち、投手は呉昇桓(オ・スンファン)投手、金広鉉(キム・グァンヒョン)投手、梁玹種(ヤン・ヒョンジョン)投手のわずか3人にとどまっています。2021年にテキサス・レンジャーズでプレーした梁玹種投手以降、KBO(韓国プロ野球)からMLBに直行した投手は皆無であり、高校卒業後に渡米してMLBの夢を叶えた投手も現在まで見当たりません。

渡米戦略の変化と契約金の低下

MBCスポーツの解説者ソン・ジェウ氏は、「高校卒業とともに渡米した投手たちが相次いで失敗した結果、最近では才能ある選手たちが一度韓国国内に残るケースが増えている」と指摘しています。また、「最近は米国側の期待感が低くなったためか、契約金も安くなっている」とも述べています。今年テキサス・レンジャーズに入団したキム・ソンジュン投手(18)が契約金120万ドル(約1億7800万円)で契約しましたが、これは2017年のペ・ジファン選手(125万ドル=約1億8500万円)以来8年ぶりに100万ドル(約1億4800万円)を突破した稀なケースでした。

まとめ

かつては朴賛浩投手などの活躍により「投手の国」としての存在感を示していた韓国ですが、現在MLBでは日本人投手が多数活躍し、台湾人投手もメジャーデビューを果たす一方で、韓国人投手の不在が深刻な問題となっています。若手有望株の相次ぐ挫折、そして米国側の期待感の低下による契約金の下落が、この現状に拍車をかけていると言えるでしょう。この傾向が今後どのように変化していくのか、注目が集まります。

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