韓国で外国人モデルがCM撮影中に首骨折、補償なき苦境と責任問題が浮上

韓国の広告業界で、CM撮影中に頸椎を骨折する重傷を負った外国人男性モデルが、制作側から十分な補償や謝罪を受けていないと訴え、波紋を広げています。今回の事態は、撮影現場の安全対策や多層的な契約構造における責任の所在、そして個人の尊厳に関わる問題として、深い議論を呼んでいます。

CM撮影中の重大事故と補償なき苦境

この外国人男性モデルは、2023年7月に某カード会社のCM撮影に参加しました。撮影内容はトランポリン上で動的なポーズを取るというもので、事前に安全性や保険適用について確認したところ、制作側からは「安全だから心配いらない」と説明を受けていたといいます。しかし、実際の現場ではトランポリンの脇に薄いマットが1枚あるのみで、他の安全対策はほとんど講じられていませんでした。

撮影中にバランスを崩して頭から落下したモデルは、病院に緊急搬送されました。診断の結果は頸椎(けいつい)の骨折および脱臼という重傷で、直ちに緊急手術を受けることになりました。その後、前方頸椎固定術と、頸椎4番から6番の後方固定手術という2度にわたる大手術を経験。幸いにして命は取り留めたものの、激しい後遺症に苦しんでおり、日常生活を送ることすら困難な状態に陥っています。

韓国CM撮影事故で頸椎骨折の外国人モデル、補償・謝罪なく苦境を訴える韓国CM撮影事故で頸椎骨折の外国人モデル、補償・謝罪なく苦境を訴える

責任の所在を巡る複雑な構造

事故後、モデルの元妻によると、制作会社側は「本人が勝手にトランポリンに上がって怪我をした」「これは不運な事故で、当社に過失はない」と主張し、責任を全面的に否定したとのことです。これに対し、モデル本人は涙ながらに「事故後、謝罪も補償も一切受けていない。連絡も来ず、顔も合わせていない。自宅にこもって仕事もできず、本当に心が苦しい」と現在の窮状を訴えています。

さらに問題を複雑にしているのは、今回のCM制作が「カード会社→広告代理店→制作会社→モデル事務所(エージェンシー)」という多重構造であった点です。モデルをキャスティングしたのはモデルエージェンシーでした。モデルエージェンシー側は当初、補償金として3000万ウォン(約340万円)を提示しましたが、これはすでにモデルが負担した医療費1800万ウォン(約200万円)とは別で、今後の障害を考慮した額と説明されました。しかしその後、エージェンシー側から「うちは小規模な事務所なので、300万ウォン値引きしてもらえないか」と交渉があったといいます。この提案に納得できなかったモデルはこれを断り、高額な手術・治療費を全額自己負担することになりました。

報道後の動きとモデルの訴え

モデルの被害を報じたJTBCの番組「事件班長」によると、番組の取材を受けた後、関係会社の一部は「被害者に会って補償について協議する」との意向を示したとのことです。

現在も治療が続くモデルは、「生活も仕事もすべてを失った。このままでは未来が見えない」と切実な思いを語っており、制作側、ひいては広告業界全体に対し、誠実で迅速な対応が強く求められています。この事故は、エンターテインメント業界における労働環境の安全性と、フリーランス契約者の権利保護について、改めて警鐘を鳴らすものとなっています。

KOREA WAVE/AFPBB News