ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は20日、ウクライナでの和平実現に向け、米欧諸国が検討を急ぐ「安全の保証」について、ロシアを抜きにした解決は「同意できないし、不可能だ」と断言しました。さらに21日には、タス通信を通じて「ウクライナに外国の軍隊が駐留することは許容しがたい」と強調。これは、米欧側を強く牽制し、ウクライナ情勢の解決におけるロシアの不可欠な関与を改めて要求するものです。プーチン露政権のこの姿勢は、トランプ米政権の認識と明白な食い違いを見せており、今後の和平協議が難航することは避けられないとみられています。
ロシア、ウクライナへの外国軍駐留を拒否し米欧を牽制
ラブロフ外相の度重なる発言は、ウクライナの将来的な安全保障枠組みに関する米欧の議論に対して、ロシアが一切譲歩しない強硬な姿勢を示しています。20日の記者会見では、安全保障問題にロシアの関与が不可欠であると訴え、21日には外国軍隊のウクライナ駐留を明確に拒否しました。これは、現在米欧諸国が議論している、北大西洋条約機構(NATO)の条約第5条に類似した「安全の保証」案に対する直接的な反論と言えます。NATO第5条は、加盟国への攻撃を全体への攻撃とみなし、集団的自衛権を行使する規定であり、ウクライナへの適用を巡ってはロシアの強い警戒があります。
モスクワで記者団の質問に応じるラブロフ露外相、ウクライナの安全保障巡り発言
米欧の「安全の保証」議論とロシアの対案
米国のウィットコフ中東担当特使は17日、先日の米露首脳会談で、ロシア側がNATO第5条に類似した形の「安全の保証」をウクライナに提供することに対し、容認したと述べていました。しかし、ラブロフ外相の20日の発言は、この容認を真っ向から否定するものです。ラブロフ外相はむしろ、多数の国が武力行使を相互に抑止し、違反した国には集団的措置をとる「集団安全保障」の導入を想定している模様です。この枠組みでは、国連安全保障理事会と同様にロシアが拒否権を持つことも視野に入れている可能性があり、これはロシアが自国の安全保障上の利益を最大限に確保しようとする戦略を示唆しています。
2022年の和平協議とロシアの立場
タス通信によると、ラブロフ外相は20日、2022年春にトルコ・イスタンブールで開かれた和平協議に言及しました。この協議でウクライナ側は、国連安保理常任理事国である米英仏中露の5大国などが参加する安全保障枠組みの設置を提案しており、ラブロフ外相は当時「ロシアもこの案を支持していた」と主張しました。この発言は、ロシアが過去に多国間での安全保障枠組みを検討していたことを示しつつも、現在の欧米主導の議論には一方的な性質があるとして拒否する姿勢を強調するものです。21日の記者会見でも、「ロシアと対立する論理でのウクライナへの安全の保証は拒否する」と述べ、欧米などが進める議論を「展望がない」と厳しく切り捨てました。
ウクライナ・ロシア首脳会談への慎重姿勢
一方、トランプ政権が調整を進めるウクライナとロシアの首脳会談の実施については、ラブロフ外相は20日、「首脳レベルの会談実施については、あらゆる段階で綿密に準備することが不可欠だ」との主張を繰り返し、改めて慎重な姿勢を示しました。これは、両国の首脳会談が単なる形式的なものに終わらず、具体的な成果をもたらすための十分な地ならしが必要であるというロシア側の認識を反映しています。
結論
ラブロフ露外相の一連の発言は、ウクライナ情勢の和平に向けた道筋において、ロシアが自国の安全保障上の要求と国際社会における役割を強く主張していく姿勢を鮮明にしました。特に「安全の保証」問題に関しては、ロシアの関与を抜きにした解決を断固拒否し、外国軍隊の駐留にも反対することで、米欧諸国との間で深い溝があることを浮き彫りにしています。今後のウクライナ和平協議は、ロシアと米欧諸国の間での根本的な認識の相違から、極めて複雑かつ難航することが予想されます。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: ロシア、ウクライナの「安全の保証」問題に自国関与を要求 米欧けん制 (https://news.yahoo.co.jp/articles/1741ca460533e975dd904492ef3fc861a9377dde)