トランプ前米大統領は21日、ロシアの侵攻が続くウクライナ情勢について、「侵略国を攻撃することなく、勝利することは非常に難しい」との見解を示し、「興味深い時が来るだろう」と主張しました。この発言は、和平交渉を巡る米露間の意見の相違が顕著になる中で、トランプ氏がいらだちを募らせている状況を示唆しており、ロシア領内への攻撃を支持する可能性をも示唆したものと受け止められています。
トランプ氏のSNS投稿と過去の発言
トランプ氏は自身のソーシャルメディアへの投稿で、ウクライナの状況をスポーツチームに例え、「優れた守備を持つチームが、攻撃を許されないようなものだ」と指摘しました。これは、バイデン前政権が昨年11月までロシアを過度に刺激することを警戒し、長射程ミサイルによるロシア領内への攻撃を承認しなかったことに触れ、「ただ防衛させるだけだった」と批判する意図があったとみられます。しかし、トランプ氏自身も今年7月には、「モスクワを攻撃すべきではない」と述べるなど、長射程兵器を供与する意向がないことを明らかにしていた経緯があります。
また、トランプ氏は15日にプーチン露大統領と会談した際の自身の写真と、1959年にニクソン米副大統領(当時)がソ連のフルシチョフ首相に同様の仕草をした写真を並べてソーシャルメディアに投稿しました。これは、ロシアに対し強い姿勢で臨んでいることを強調する狙いがあったとみられています。
トランプ氏がプーチン氏に、ニクソン氏がフルシチョフ氏に強く迫る仕草の比較。
ウクライナ側の反応と米ロの溝
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、同国西部ムカチェボにある米企業所有の電子機器製造施設がミサイル攻撃を受けたと公表しました。ゼレンスキー大統領はこれを「米国の資産に対する意図的な攻撃だ」と非難しています。
トランプ氏は米アラスカ州で15日にプーチン氏と会談し、その後の声明で、それまで求めていた即時停戦ではなく、ロシア側の意向に沿った包括的な和平合意を目指す方針を示しました。これは、ロシア側の主張にある程度歩み寄る姿勢と見なされました。さらに、米政権はウクライナが要求する「安全の保証」について、ロシア側が容認したとも説明していました。
米アラスカ州での会談で向かい合って話すトランプ前米大統領とプーチン露大統領。
しかし、米政権が早期開催を目指すロシアとウクライナの首脳会談に関して、ロシア側は依然として慎重な姿勢を崩していません。「安全の保証」を巡っても、米欧側とロシア側の間で認識の違いが浮き彫りになっており、和平への道は依然として不透明な状況が続いています。
まとめ
トランプ前米大統領の「侵略国を攻撃することなく、勝利は難しい」との発言は、ウクライナ紛争に対する米国の今後の戦略、特にロシア領内への攻撃容認の可能性について新たな議論を巻き起こしています。ウクライナ側からの米国資産への攻撃に関する非難と、米露間で依然として存在する和平交渉、特に「安全の保証」を巡る見解の相違は、国際社会がこの複雑な情勢の展開を注視する必要があることを示しています。今後の各国の外交努力と軍事動向が、紛争解決の鍵を握るでしょう。
参考文献
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/9c22639629f760b7945a62120fecdba0a24d82b4