NHKの新会長にみずほフィナンシャルグループ元会長の前田晃伸氏が決まった。来年1月に就任する。
5代続けて外部からの起用である。受信料収入に甘えた組織の希薄なコスト意識を改めて見直し公正な番組づくりに強い指導力を発揮してもらいたい。
就任が決まった前田氏は会見で「公共放送にふさわしい仕事をしていきたい」「国民のみなさんから信頼される番組を作り続ける。これに尽きる」などと述べた。
残念ながらNHKの現状は、視聴者が期待するそうした公共放送の姿と隔たる。
NHKの肥大化に対し、総務省が待ったをかけたばかりだ。テレビ番組をインターネットでも流す常時同時配信の認可申請に対し、受信料のあり方や業務全体の効率化を検討するよう要請した。
これに対しNHKは今月8日、ネット活動業務費削減や、衛星放送についてBS4波を3波に整理する方針などの回答を示した。
しかし、受信料値下げのほか、子会社など関連団体の見直しに具体的な記述は乏しい。総務省は業務・受信料・ガバナンス(組織統治)の三位一体改革を求めており、答えになっていないと言わざるを得ない。
とくに受信料のさらなる値下げは急務である。受信料収入は年間7千億円を超える。一方でNHKの内部留保は、子会社も含め約2千億円にのぼる。業務範囲を見直し、受信料を下げて視聴者に還元するのは当然である。
最高裁は、視聴者が負担する受信料制度を合憲としたが、「公共の福祉」をかなえる放送目的を重くみたためだ。その判決の中では民放と二元体制で築かれてきた放送メディアの歴史にも触れている。NHKの独占、肥大化が過ぎれば放送メディアの健全な発展はかなわない。
番組内容や報道姿勢についても相変わらず批判がある。事実に基づく公平・公正な内容を改めて求めたい。不倫ドラマやバラエティーなどが公共放送に本当に必要なのかも、考えるべきだ。
会長の外部起用は、平成16年に職員の多額の制作費着服など不祥事が相次いだことを契機にした。内部昇格では困難な思い切った改革を行うためだ。改革は途上であるのに、肥大化の懸念などが増しているのは看過できない。