長年、心に隔たりがあった母が遺した実家は、想像を絶する「モノ屋敷」と化していました。母の他界後、その家財の山に直面した娘たちの胸に去来する思いとは何でしょうか。本稿では、遺品整理という現実を通して見えてくる家族の絆、そして片付けの先に希望を見出す人々の物語に焦点を当てます。ゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)代表の二見文直氏が「イーブイ片付けチャンネル」で配信する事例を基に、親の最期に向けて子どもたちが考えるべきことを考察します。
亡き母の遺品整理を前に複雑な心境を語り合う姉妹
遺品整理の現実:亡き母の「モノ屋敷」に残された家族の葛藤
関西地方に位置する3LDKのマンションの一室。かつては両親と3人の子ども、計5人家族の賑やかな生活があった場所です。しかし、時を経て姉妹が独立し、父親が他界した後は、母親と弟の二人暮らしとなりました。やがて母親は病に倒れ、入退院を繰り返すようになり、弟も家を出ていきました。最終的に母親は施設に入所し、その4年後に永眠。残されたのは、家族が過ごした歴史と共に膨大に積み上がった家財の山でした。
今回の依頼は、この母親が遺した品々の整理、すなわち遺品整理でした。特に姉は、母親との関係が良好ではなかったため、父親の死後は実家をほとんど訪れていませんでした。スタッフが依頼に至る経緯を尋ねると、姉は複雑な胸の内を語り始めます。
「母が体調を崩し入退院を繰り返していた間も、妹と私はこの家へ足を踏み入れることがほとんどありませんでした。正直なところ、ここに来るのがどこか嫌だったんです。妹からは『どうして?たまには顔を出しなよ』と促されても、『母がいない空っぽの家に入るのは、どうも気が進まない』と。もちろん、母が生前から荷物の量が尋常ではないことは分かっていたのですが、それだけではない、心の問題が横たわっていました。」
このように、遺品整理は単なる物の片付けに留まらず、故人との関係性や、残された家族の心の整理が強く求められる行為なのです。
親との関係性を見つめ直す遺品整理
この姉妹の事例は、遺品整理が故人の生前の暮らしぶりだけでなく、残された家族の心の内をも映し出す鏡であることを示しています。長年の確執や未解決の感情が、物の山となって目の前に現れるとき、私たちは過去と向き合わざるを得ません。専門家は、こうした遺品整理を通じて、故人の「孤独」と、それを乗り越えようとする家族の「希望」に焦点を当てています。親の終活や生前整理が、残される子どもたちの負担を軽減し、心穏やかな別れに繋がる可能性を示唆しているのです。
参考文献
- Yahoo!ニュース: 亡くなった母に対する複雑な思いを打ち明ける姉妹