近年、高校卒業後に日本の大学ではなく海外大学への進学を目指す子どもが増加傾向にあります。さらに、大学進学よりも前の段階で、子どもを海外の学校に通わせる保護者も増加しています。特にここ数年で注目度が高まっているのが、イギリスのボーディングスクールです。インターネットを通じてさまざまな情報が入手できるようになっているほか、日本国内でも「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」(岩手県八幡平市)や「ラグビー・スクール・ジャパン」(千葉県柏市)といったボーディングスクールが開校し、その認知度自体が高まっていることも背景にあるでしょう。
ボーディングスクールとは?その多様な魅力
ボーディングスクールとは、親元を離れて寮で同年代の子どもたちと共同生活を送る寄宿学校のことです。生徒たちは仲間と共に勉強に励むだけでなく、スポーツやアートなどのクラブ活動にも積極的に取り組むことができます。イギリスだけでなくアメリカ、スイス、アジアなどにも同様の学校が存在しますが、中でもイギリスのボーディングスクールは根強い人気を誇っています。
イギリスのボーディングスクールに通う日本人学生の数は、この10年間で顕著な増加を見せています。2015年には815人(うち単身341人)だったのが、2025年には1356人(うち単身675人、10月28日現在)に達しています。コロナ禍の影響で一時的に数が落ち着いた時期もありましたが、10年前と比較して500人近く増加しているという事実は、その人気の高まりを物語っています。
イギリスには現在434校のボーディングスクールがあります(2025年現在)。受け入れ年齢は学校によって異なり、7歳から13歳を対象とするプレップスクール、13歳(または11歳)から18歳を対象とするシニアスクール、そして3歳前後からのプレ・プレップスクールなど、多岐にわたります。1000年以上の伝統を持つ学校、女子校、男子校、大規模校から小規模校まで、また田舎から都心まで立地もさまざまです。学力レベルや力を入れているクラブ活動も学校ごとに異なり、子どもたちの個性や家庭の教育方針に合わせた選択が可能です。
イギリス式教育の魅力:学力以上の価値
長年にわたりイギリスのボーディングスクールで学ぶ留学生をサポートしてきた、ピッパズ・ガーディアンズ代表のベン・ヒューズ氏は次のように述べています。「イギリスのボーディングスクールは学力だけに焦点を当てる学力至上主義ではありません。勉強以外のスポーツやアートといったクラブ活動にも力を入れています。都心部から離れた場所にある学校はアクセスに時間がかかるものの、美しい施設や豊かな自然に囲まれて過ごせるのも大きな魅力です。クラスも少人数制で、教師一人に対して生徒が8~9人と手厚い指導を受けることができます。」
生徒たちが学習に取り組む教室風景
日本の保護者の中には、子どもの頃から続く過熱した中学受験戦争や、勉強以外の時間を確保することが難しい塾通いなど、日本の競争的な教育環境や学力至上主義に疑問を感じている人も少なくありません。
そのような保護者にとって、英語力を身につけながら、勉強以外のクラブ活動にも打ち込むことができ、さらに同年代の友だちと多くの時間を共有できるイギリスのボーディングスクールは非常に魅力的だと言えるでしょう。
日本での関心の高まり
イギリスのボーディングスクールに対する日本での関心の高まりは、実際のイベントでも見て取れます。多くのイギリスの学校が参加した、東京で開催された「ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェア October 2025」には、例年以上に多くの人々が来場し、熱心に情報収集を行っていました。これは、多様な価値観とグローバルな視点を育むイギリスの教育システムへの期待が、日本国内で着実に高まっていることを示しています。
結論として、イギリスのボーディングスクールは、単なる学力向上だけでなく、スポーツや芸術、国際的な共同生活を通じて、子どもたちの全人的な成長を促す教育環境を提供しています。日本の教育システムとは異なるアプローチで、自立心や協調性、多様な文化への理解を深める機会を与え、将来のグローバル社会で活躍できる人材を育成する上で、魅力的な選択肢となりつつあります。





