ガザ北部で「飢饉」発生、国際機関が初の公式宣言:IPCが「人為的」と即時停戦要求

国連機関などが参加する食料安全保障レベル分類(IPC)は22日、パレスチナ自治区ガザ北部で「飢饉」が発生しているとの報告書を発表しました。国際機関がガザでの飢饉を公式に宣言するのは今回が初めてです。IPCは、この深刻な食料危機が「人為的」なものであると断定し、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの即時停戦を強く求めました。

国際食料安全保障レベル分類(IPC)の評価

IPCの報告書によると、ガザ市は壊滅的な飢饉を示す最高段階の「フェーズ5」に分類されました。ガザ全域では、50万人以上が「フェーズ5」の飢饉状態にあり、さらに107万人が「フェーズ4」の危機的な食料不足に直面していると判断されています。

IPCは、ガザにおける飢饉が「急速に拡大している」と指摘し、このままでは9月末までに中部ディール・アルバラハや南部ハンユニスにも飢饉が及ぶと予測しています。このような人道的危機を回避し、ガザ全域に支援物資を確実に届けるためには、「停戦が不可欠な前提条件である」と強く訴えかけました。

飢餓の深刻化と人道的状況

ガザの住民は、2023年10月に戦闘が始まって以来、食料を十分に得られない状況が続いています。特に、イスラエルが今年3月上旬にガザへの物資搬入を全面的に阻止したことで、飢餓はさらに深刻化しました。5月末からは物資搬入が本格的に再開されましたが、現地には依然として十分な支援物資が行き渡っていません。

ガザの保健当局が20日時点で発表したデータによると、飢饉による死者は269人に上り、そのうち子供が112人を占めています。また、イスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団」(GHF)の配布所で食料を得ようとして、混乱の中で殺害された住民は2018人に及ぶと報告されています。

ガザ南部ハンユニスで、食料危機に直面し支援物資の配給を待つパレスチナ住民ガザ南部ハンユニスで、食料危機に直面し支援物資の配給を待つパレスチナ住民

イスラエル政府の反論とIPCの緊急な訴え

これに対し、イスラエル首相府は22日、「IPC報告書は全くのうそだ」と反発する声明を発表しました。首相府は、ガザでの戦闘開始以来、200万トンもの物資をガザに搬入させたとし、「イスラエルに飢餓政策は存在しない」と強調しました。その上で、「ハマスが援助物資を盗み、戦争の資金としている」と主張し、食料問題の責任をハマス側に転嫁しました。

しかし、IPCは「飢饉を終わらせるのは時間との闘いになる。即時停戦と紛争の終結が重要だ」と改めて強調し、国際社会に対し早急な対応を促しています。このガザにおける人道的な状況は、国際社会にとって喫緊の課題であり、その解決には国際的な協調と迅速な行動が求められています。

結論

ガザ北部で国際機関が初めて公式に飢饉を宣言したことは、パレスチナ自治区の人道的危機が前例のないレベルに達していることを示しています。IPCは「人為的」な飢饉であると断じ、即時停戦と支援物資の無制限な搬入を強く要求していますが、イスラエル政府は報告書を否定し、ハマスによる援助物資窃盗を主張しており、両者の認識には大きな隔たりがあります。ガザ住民の生命を守り、飢餓を食い止めるためには、国際社会が一致団結して停戦を実現し、人道支援を強化することが不可欠です。

参考資料

  • 総合的食料安全保障レベル分類(IPC):国連の食糧農業機関(FAO)や世界食糧計画(WFP)、国際NGOなどが参加する国際的な枠組み。食料危機の深刻度を科学的な基準に基づき、1(軽度)から5(飢饉)の5段階で評価します。