ユニセフ(国連児童基金)のキャサリン・ラッセル事務局長は、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)閉幕後の来日中、時事通信のインタビューに応じました。その中で、パレスチナ自治区ガザで深刻化する子供たちの飢餓状況に「泣き声を上げる体力すら奪われ、一人また一人と静かに餓死している」と強く警鐘を鳴らしました。事務局長は、イスラエルによる支援物資搬入制限の緩和と、日本政府を含む国際社会からの緊急な働きかけの必要性を訴えています。
TICAD9後に来日し、時事通信のインタビューに応じるユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長。ガザ地区の危機的状況について語った。
ガザの危機:子供たちの「静かな餓死」と支援課題
ラッセル事務局長はガザの現状を「筆舌に尽くし難い地獄」と表現。ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始以降、食料難で少なくとも271人が死亡、うち112人が子供です。餓死者は増加傾向にあり、物資が届けば多くの命を救えるとして、イスラエルへの搬入制限緩和を強く求めました。今年3月、イスラエルはイスラム組織ハマスとの停戦交渉決裂を受け支援を停止。5月に約2カ月半ぶりに再開されたものの、厳しい検査や現地での略奪により物資は滞っており、日本政府を含む国際社会の積極的な働きかけが不可欠です。
「忘れられた危機」スーダンと国際援助の意義
TICAD9でアフリカ開発に関する活発な議論が交わされる中、ラッセル事務局長は「ほとんど忘れられている危機」にも言及しました。2年以上続く内戦で国内外に約1200万人の避難民を出したスーダンを例に挙げ、多くの子供が就学機会を奪われ、暴力の対象となっている現状を憂慮。「遠い国の悲劇ではなく、もし自分の周囲で起きたらと想像してほしい。全ての子供は安全な環境で育つ権利がある」と、普遍的な子供の権利保障の重要性を強調しました。また、最大のドナー国である米国が対外援助を大幅削減するなどユニセフを取り巻く環境は厳しいものの、事務局長は「人々の生死を分ける活動への支援は変わらないと信じる」と表明。困窮する国への支援が世界の安定化に繋がり、巡り巡って援助国自身の利益となることを各国に求めました。
結び:未来のための人道支援への継続的取り組み
キャサリン・ラッセル事務局長は、ガザの子供たちの絶望的な飢餓状況やスーダンなどの「忘れられた危機」に改めて光を当て、国際社会の連帯と行動の重要性を強調しました。ユニセフの財政的困難がある中でも、困窮国への支援が世界の安定と平和に不可欠だと訴え、全ての子供の安全な成長、ひいては私たち自身の未来のために、国際的な人道支援への継続的な関心と取り組みを強く求めます。
参考資料:
時事通信 (Yahoo!ニュース): ユニセフ事務局長「ガザの子、静かに餓死」 日本に働き掛け要請―東京都内インタビュー