ソウル都心部でネズミの目撃情報が急増し、国際都市としての公衆衛生とインフラの課題が浮き彫りになっています。2024年8月4日午前10時、ソウル市冠岳区の新林駅4番出口の花壇では、拳大のネズミ3匹が下水道へ姿を消す様子が確認されました。そこには人の手で掘られたようなネズミの穴が6つも存在し、市民が悲鳴を上げる場面も。近隣の店員チョン・ウヨルさん(28)は、夜間の茂みから聞こえるカサカサという音がネズミによるものだと証言し、店先でネズミを目撃して驚く客が急増していると語ります。かつてニューヨークやパリといった老朽化した国際都市の象徴とされた「ゴミ箱を漁るネズミ」の光景が、今やソウルの地下鉄やバス停など公共施設でも日常化しつつあります。
国際都市ソウルでネズミが再び猛威を振るう
ソウル市では、地方自治体がネズミ退治に本格的に乗り出し、1970年代に全国的に展開されたネズミ撲滅運動が約50年ぶりに復活する事態となっています。これは、数世紀にわたって多くの国際都市が克服に苦しんできた「ネズミとの死闘」に、ソウルも参戦したことを意味します。ネズミは、人類を最も恐れさせた伝染病であるペストの主要な媒介体であり、代表的な病原菌の運び屋です。ネズミの糞便によって排出される病原菌が皮膚や呼吸器を通じて広がるレプトスピラ症など、年間400人以上の感染患者が発生しており、ソウルの公衆衛生に深刻な脅威をもたらしています。
ソウル都市部のネズミ問題を示すグラフィック。ネズミの活動、生息状況、老朽化した下水管路の現状が視覚的に表現されており、ソウルの公衆衛生上の課題を解説する。
ネズミ大量発生の背景:生ごみ問題と老朽化したインフラ
ネズミの主な活動場所は、元々、猛暑日に生ごみが放置されるマンション団地でした。新築・中古物件に関わらず、一部住民が生ごみを従量制袋に入れずに捨てるなどの不適切な処理が、ネズミの数を急増させています。ソウル市松坡区のマンションでは、リサイクルゴミを出すたびにビニール袋がネズミによって破られる被害が報告されており、警備員のキム・サンジンさん(69)は、住民からの苦情が増えていることに頭を抱えています。さらに最近では、各区役所の苦情掲示板に「バス停や地下ショッピングモールでネズミの群れが発生している」との声が頻繁に寄せられるようになっています。
ソウルにネズミの群れが集まる主な原因として、排水管や下水管の老朽化が挙げられています。これは、ニューヨークやロンドンなど、世界の主要国際都市に共通する課題です。国立生態院のウ・ドンゴル博士は、「ネズミは下水道や地下の汚水を生活拠点としており、下水管の整備と生ごみの適切な排出が徹底されるべきだ」と警鐘を鳴らします。また、ある駆除業者の関係者は、「古い配管ほど衝撃に弱く、ネズミが多少かじっただけでも隙間が生じ、そこから配管内部に侵入したネズミが大繁殖する」と説明しています。ソウル市の下水管路(総延長1万866キロメートル)のうち、50年以上の老朽化した管路は30.4%(3300キロメートル)を超え、30年以上の管路に至っては55.5%(6028キロメートル)に上るというデータが、この問題を裏付けています。
課題解決に向けた国際都市ソウルの挑戦
ソウル都心部でのネズミの大量発生は、単なる衛生問題に留まらず、都市インフラの老朽化が引き起こす公衆衛生上の危機として認識されています。伝染病のリスクを抑制し、市民の安全な生活環境を確保するためには、生ごみ処理の徹底、老朽化した下水管路の大規模な修繕と交換が急務です。国際都市としてのソウルが、この「ネズミとの死闘」をいかに克服し、持続可能な都市環境を構築していくかが注目されます。
参考文献
- Yahoo!ニュース. (2025年8月18日). ソウルの都心「ネズミ天国」に…米NYや仏パリで見られた光景がソウルでも. 朝鮮日報日本語版. https://news.yahoo.co.jp/articles/45168100fc463c6d3ce0dd5fc4796a688183a5b2