外国人材との共生:日本人が知らない「自己肯定感」の違いが招く現場の課題

人口減少と国内市場の縮小が進む日本において、外国人材との共生は避けて通れない喫緊の課題となっています。しかし、言葉や文化が異なる人々との協働は、決して「きれいごと」だけでは済まされません。人材マッチングに携わる中村大介氏の著書『日本人が知らない 外国人労働者のひみつ』では、混乱する現場のリアルな実態と、外国人労働者との円滑な共生に向けた具体的なヒントが「忖度ナシ」で語られています。本稿では、その中でも特に顕著な「外国人労働者の自己肯定感の高さ」が現場に与える影響と、その対応策に焦点を当てて解説します。

外国人材の「自己肯定感」の高さが現場で生む認識のズレ

外国人材と接する中で、国籍を超えて共通して感じられるのが、彼らの「自己肯定感」の圧倒的な高さです。まるで幼い頃から愛情を一身に受け、常にポジティブな言葉の中で育ってきたかのようなタイプが多く見受けられます。この特徴は、特にスキルや能力に関する自己評価において、日本人との間に大きな認識のズレを生じさせることが少なくありません。

例えば、日本人が「私、泳げます」と言えば、一般的には25メートル程度は泳げると考えるのが自然でしょう。しかし、外国人の場合、たとえ5メートルしか泳げなくても、あるいは3メートルでも、自信満々に「私、泳げます」と断言します。この感覚が仕事上のスキルにもそのまま適用されるため、「この仕事ができますか?」と尋ねられた際、彼らはたとえ3メートルレベルの能力であっても「できます」と自信をもって答えるのです。採用側は日本人の奥ゆかしさを基準に「最低でも25メートルレベルのスキルはあるだろう」と思い込み、結果として、実際に仕事を始めてみると期待を下回るケースが頻発します。

レストランの調理スタッフとして採用されたある外国人の例は、これを端的に示しています。彼は「料理ができます」と主張するだけでなく、「うちの料理長よりも僕の方が料理はうまいですよ」とまで豪語していました。しかし、働き始めてみると、その腕前は決して高くなく、鼻っ柱を折られた彼はわずか3日で退職してしまいました。このような事態を避けるためには、採用面接時におけるスキル確認を徹底的かつ具体的に行うことが不可欠です。

外国人労働者と日本人社員が職場でコミュニケーションをとる様子外国人労働者と日本人社員が職場でコミュニケーションをとる様子

ミスへの向き合い方とトラブル発生時の効果的な対応

外国人材の自己肯定感の高さが最も課題となるのは、業務上でトラブルが発生した時です。彼らは基本的に自身の非を認めようとせず、人前で叱責されることを非常に嫌がる傾向があります。何か問題が起きれば、必ずと言っていいほど言い訳をします。感情的に怒るのではなく、論理的に事実を追及していくと、反論の余地がなくなったところで泣き出すか、あるいは辞職してしまうケースも見られます(中村氏の印象では、女性は泣いても周囲に慰められて立ち直る人が多いとのことです)。

このような状況において、日本側の管理者や同僚は、異文化理解に基づいたきめ細やかな対応が求められます。トラブルの原因究明や改善指導の際には、感情的にならず、冷静かつ客観的な事実に基づいて説明し、相手の尊厳を傷つけないよう配慮することが重要です。彼らが自身の過ちを認めにくい背景には、文化的・教育的な要因があることを理解し、一方的に責めるのではなく、共に解決策を見出す姿勢で接することが、外国人労働者との長期的な信頼関係を築く上で不可欠となります。

まとめ:異文化理解が鍵となる外国人材との共生

外国人材の自己肯定感の高さは、時に日本人との間で認識のギャップやトラブルを引き起こす要因となります。しかし、これは彼らの持つポジティブさやチャレンジ精神の裏返しでもあり、適切に理解し、対応することで、企業の成長に繋がる貴重な人材となり得ます。

採用段階での詳細なスキル確認、そしてトラブル発生時には感情的にならず、論理的かつ尊厳を尊重したコミュニケーションを心がけることが、円滑な共生への第一歩です。異文化理解を深め、互いの違いを認め合う姿勢こそが、少子高齢化が進む日本社会において、外国人材と共に未来を築くための鍵となるでしょう。


参考文献:
中村大介著『日本人が知らない 外国人労働者のひみつ』(抜粋連載第2回)