オーストラリア政府が検討していた海軍の新型護衛艦の導入計画において、日本が入札を勝ち取った。英紙「フィナンシャル・タイムズ」はこの出来事を日本が主要な武器輸出国に転換する大きな第一歩だと報じる一方、国内の防衛産業には不安な点もあると指摘する。
【画像】平和主義の国だった日本が“武器輸出大国”になる絶好の機会を得た 英紙が見た「豪フリゲート受注」
2025年8月、オーストラリア政府は同国海軍の次期フリゲート艦に、日本の三菱重工業製の艦艇をベースにした新型艦を採用すると発表した。
周辺地域の緊張が高まり、防衛産業への需要が急騰するなか、この決定は日本が主要な武器輸出国となるための大きな一歩となるだろう。
日豪の契約締結は2026年初頭になると見られている。建造に投じられる費用は推定65億ドル(約9500億円)に達し、日本にとってはこれまでで最大規模の防衛装備品の輸出となる。
日本が今後、軍艦やミサイル、レーダーシステムを輸出する際のモデルケースにもなるであろうこの出来事は大きな飛躍のきっかけにもなると、元防衛省職員で地経学研究所の主任研究員である小木洋人は言う。
「これから日本の軍事企業は、世界市場に進出する機会を積極的に模索するでしょう」
供給不足に陥る世界の防衛市場
ウクライナや中東での戦争、インド太平洋地域における米中の緊張の高まりから、世界各国が防衛費を急増させ、関連産業は活況を呈している。三菱重工はこうした背景のもとで躍進した。
日本の軍事企業は技術的には優れているが、政府は1960年代後半から武器輸出を原則的に禁止してきた。2014年にはその「自主規制」を大幅に緩和したが、その2年後にオーストラリアの次期潜水艦建造計画の入札でフランスに敗れて以来、大型受注を獲得できていなかった。
小木はいまと当時の違いとして、現在の防衛市場が世界的に供給不足に陥っている点を挙げる。
「米国だけでは、同盟国の武器需要を満たすことはできません。オーストラリアは日本の供給力を必要としています」
Harry Dempsey, Nic Fildes and Malcolm Moore