近鉄グループホールディングス(HD)の若井敬社長が毎日新聞のインタビューに応じ、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)における事業拡大への強い意欲を表明しました。特に、大阪・関西万博会場の跡地開発に関して、「メインスポンサーにはなれないが、必要があれば出資の可能性も検討したい」と述べ、積極的な姿勢を示しています。これは、同社が従来の鉄道事業に留まらず、新たな成長領域を模索する中で、大阪の国際的なイベントを最大限に活用しようとする戦略の一環と見られます。
夢洲事業拡大と中期計画を語る近鉄GHD若井敬社長
夢洲での事業拡大とIRへの関与
近鉄HDは、万博会場の隣で建設が進む統合型リゾート(IR)の運営会社「MGM大阪」に少数株主として出資を決定しており、IR事業への深い関与を見せています。若井社長は、IRにおいて「(旅行など)人の動きに関わるビジネスやホテルの運営、流通など、さまざまなチャンスがある」と強調し、多角的な事業展開の可能性を指摘しました。さらに、今後の活用方法が検討されている万博跡地についても、「IRと同様に誘客施設になってくることは間違いない」と述べ、夢洲全体を一大観光・ビジネス拠点として捉えるビジョンを示しました。
観光列車による誘客強化
2030年秋ごろのIR開業に合わせて、近鉄HDは夢洲へ繋がる大阪メトロ中央線と近鉄各線を直通させる計画を進めています。この計画では、新型車両の導入も検討されており、特に奈良や京都、伊勢志摩といった既存の観光地と夢洲を結ぶ豪華観光列車が念頭に置かれています。若井社長は、この豪華観光列車を「IRを楽しむメニューの一つとして商品設計を考えている。輸送手段というよりは乗っていただくことの価値を提供したい」と語り、単なる移動手段に留まらない、体験価値の高い移動サービスの提供を目指す方針です。
万博効果と沿線外事業の推進
近鉄HDは、2026年3月期連結決算において約125億円と見込んでいた万博による増収効果を、すでに2025年7月末時点で達成し、さらに上振れする見通しであると発表しました。この好調な要因として、近鉄百貨店が会場内に出店する公式ストアの成功、ホテル事業の貢献、そして大阪―名古屋間の特急列車の利用増が挙げられています。
また、2025年3月に発表した2028年度までの4年間の中期経営計画では、「沿線外での事業拡大」を重点戦略の一つとして掲げています。具体的には、首都圏での物件取得を進めるほか、沖縄では出資するテーマパーク「ジャングリア沖縄」が2025年7月に開園しました。沖縄での事業展開について若井社長は、「オリオンビールなど地元企業と連携し、ホテルや不動産事業を進めたい」と述べ、地域との協調による事業拡大の意欲を示しました。
さらに、大阪上本町駅(大阪市天王寺区)一帯の再開発計画についても、2025年度中に方向性を示し、2028年度までに開業時期などの詳細を公表する予定です。若井社長は、この再開発を「周辺は生活する方も多い。商業施設や住宅、ホテル、オフィスなどを複合的に備えた街にする。日常の延長線上にある、お役に立てるような場所にしたい」と語り、地域住民の生活の質向上にも貢献する複合的な都市開発を目指しています。
まとめ
近鉄グループホールディングスの若井敬社長は、大阪・夢洲を中心とした大規模な事業拡大戦略を推進しており、IRや万博跡地開発への積極的な関与を通じて新たな収益源を確保しようとしています。また、豪華観光列車の導入による誘客強化や、首都圏・沖縄など沿線外での不動産・観光事業の展開、さらには大阪上本町駅周辺の再開発など、多角的なアプローチでグループ全体の成長と進化を目指しています。これらの取り組みは、近鉄HDが日本の経済と観光の活性化に大きく貢献する可能性を秘めています。
参照元
- 毎日新聞 (2025年8月25日). 近鉄GHD社長、大阪・夢洲事業拡大に意欲 万博跡地も出資検討.
https://news.yahoo.co.jp/articles/48d50fc5ebaf52774d77799a73bb899d50314b2c