カナダの次期潜水艦事業「カナダ哨戒潜水艦計画(CPSP)」において、韓国のハンファオーシャン・HD現代重工業コンソーシアムとドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズ(tkMS)が最終候補に選定された。しかし、カナダ首相が発表当日にドイツの競合造船所を訪問したことで、業界内ではドイツが優勢に立つのではないかとの見方も浮上している。
カナダ哨戒潜水艦計画(CPSP)の概要
CPSPは、カナダが北極圏の防衛力を強化し、ロシアや中国への対抗を目的として、通常動力型潜水艦8隻から12隻を導入する大規模プロジェクトである。カナダ国防省は、この事業の総予算を最大600億カナダドル(約6兆3500億円)と見積もっており、これには導入後30年間の維持・補修・整備(MRO)費用も含まれる。当初、フランスのナバルグループ、スペインのナバンティア、スウェーデンのサーブなど欧州の大手防衛産業企業も参加を表明したが、結果的に韓国とドイツの2社が「予選」を通過した形となった。
提案される潜水艦の性能比較
韓国のハンファオーシャン・HD現代重工業コンソーシアムは、3000トン級の「張保皐(チャンボゴ)-III Batch-II」をカナダに提案している。この潜水艦は、非大気依存推進装置(AIP)と高性能リチウムイオンバッテリーを搭載し、3週間以上の連続潜航が可能という特徴を持つ。一方、tkMSが提示するのは2500トン級の「212CD型」である。212CD型は、音波探知機(ソナー)に対する被探知性を極限まで抑えたステルス形状設計が強みとされている。
韓国防衛産業にとっての意義と勝敗を分ける変数
このCPSPを韓国が受注すれば、陸海空にわたる多様な防衛産業ポートフォリオをさらに充実させ、カナダという新たな市場を開拓することになる。これは、政府が目標とする「防衛産業4大強国」への重要な一歩であり、もし逃した場合の影響は大きい。造船業界の関係者によると、潜水艦の基本的な性能面では韓国が優勢と評価されているが、ドイツの潜水艦もカナダの要求基準を満たしており、性能自体が勝敗を分ける決定的な要素ではないと見られている。
最終的な勝敗を左右する「性能以外の変数」としては、主に以下の3点が挙げられる。一つ目は、潜水艦の30年間の運用を支援する能力「運用支援(ISS)」。二つ目は、武器販売国がカナダに経済的価値を創出することを求める「産業技術ベネフィット(ITB)」政策への対応。そして三つ目は、最も重要視される「経済・安全保障協力」である。ISSとITBにおいては韓国がドイツをやや上回ると評価されているものの、その差は大きくないとされる。結局、最終的にはカナダとの経済的・安全保障的な協力関係が結果を左右する可能性が高い。
カナダ首相のドイツ訪問が示す競争の行方
CPSPの最終候補発表と同じ日の現地時間26日、カナダのカーニー首相はドイツを公式訪問した。カーニー首相はドイツのメルツ首相と会談後、核心素材やエネルギー分野での両国協力強化を目指す共同意向合意書(JDI)に署名。さらに、マクギンティ国防相と共に独キールのtkMS造船所を訪れた。カーニー首相は公平かつ透明な競争を約束し、秋にはハンファオーシャンの造船所も訪問する計画だと明かした。
カナダのカーニー首相がドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズ(tkMS)造船所で潜水艦模型を受け取る様子。次期潜水艦事業のライバル企業訪問は注目を集めている。
これに対し、姜恩瑚(カン・ウンホ)元防衛事業庁長(全北大教授)は、「ドイツは2011年のインドネシア潜水艦事業で韓国に敗北して以来、雪辱を期してきた」と指摘。「韓国は企業と政府が『コリアワンチーム』として手を携え、総力戦で臨むべきだ。首脳外交も積極的に活用し、政府全体レベルでの取り組みが求められる」と強調している。CPSPは韓国にとって大きな機会であると同時に、ドイツとの激しい国際競争を乗り越えるための国家的な挑戦となっている。