Netflix人気ドラマ『エスクワイア』に光る韓国脚本界の深層:伝統と女性作家の力

Netflixで独占配信中の韓国ドラマ『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』は、その緻密な物語構成と奥深い人間描写で高い人気を博しています。法律事務所ユルリムの訴訟チーム長ユン・ソクフン(イ・ジヌク)と新人弁護士カン・ヒョミン(チョン・チェヨン)という主人公二人のキャラクター設定と内面的な葛藤が巧みに描かれ、視聴者は回を追うごとに彼らの物語に深く引き込まれていきます。このリーガルドラマが示す韓国コンテンツの質の高さは、長年にわたり培われてきた韓国脚本家の力量と、その背景にある文化的な土壌に根差しています。

Netflix人気ドラマ『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』で主演を務めるイ・ジヌクとチョン・チェヨンNetflix人気ドラマ『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』で主演を務めるイ・ジヌクとチョン・チェヨン

『エスクワイア』に光る韓国ドラマの脚本力とその背景

『エスクワイア』の最大の魅力は、その何層にも重なった物語構成にあります。主人公二人の関係性の変化、各話完結で展開される興味深い訴訟案件、そして法律事務所ユルリムの内部で進行する人事問題など、複数の要素が複雑に絡み合いながら物語が進みます。まるで一つのドラマを見ているのに、多様なジャンルの作品を同時に楽しんでいるかのような感覚は、現代韓国ドラマが持つ大きな特徴の一つと言えるでしょう。この「大きな物語」を紡ぎ出すパク・ミヒョン脚本家の手腕は、まさに賞賛に値します。

こうした多面的なスケールを持つ韓国ドラマの隆盛は、従来の脚本家たちが積み重ねてきた努力と実績の結晶です。韓国ドラマの脚本がどのように作られているのか、その背景を探ることは、現在のK-ドラマ人気を理解する上で不可欠です。

韓国脚本界の徒弟制度と女性作家の台頭

20年以上前、韓国ドラマの制作現場を取材する中で特に興味深かったのは「脚本の作られ方」でした。映画やドラマにおいて脚本が「命」であるとすれば、当時の脚本家の実情は非常に重要でした。そこで明らかになったのは、韓国の脚本家の世界が「徒弟制度」を基盤としていることです。実績のある脚本家に弟子入りした見習い脚本家は、師匠のもとで厳しい修行を積み、一人前として脚本を任される機会をひたすら待ちます。この見習い期間は5年以上に及ぶことも珍しくなく、その間は原則として報酬がないという現実がありました。

経済的な理由から修行期間に耐えられない男性が多く、結果として、専業の仕事を持たない女性が見習い脚本家へと転じるケースが圧倒的に多かったのです。シナリオライター養成講座の受講生も女性ばかりという話もよく耳にしました。男性が特に演出を志向する傾向があったことも、韓国ドラマの脚本分野で女性が多数派を占めるに至った一因です。この歴史的背景が、現在の韓国ドラマにおける多様な視点と繊細な人間描写に繋がっていると言えるでしょう。

巧みな物語構成で視聴者を引き込むNetflixシリーズ『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』の場面写真巧みな物語構成で視聴者を引き込むNetflixシリーズ『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』の場面写真

「文を尊ぶ国」韓国の伝統が育んだ文学の力

韓国の文芸における深い伝統も、脚本界の発展に大きく影響しています。近世まで朝鮮半島は「文の社会」であり、王朝を動かしていたのは文官たちでした。文章に長けていなければ出世できない仕組みが根付いており、「文を尊ぶ国」としての伝統が深く息づいていました。この精神は近代から現代にかけても変わらず、詩集がベストセラーになるほど、詩を愛する国民が多いことが文芸全体の発展を促しました。

一方で、大衆小説や私小説は純文学ほど盛んにはなりませんでした。「人間はどう生きるべきか」という普遍的なテーマを追求する純文学こそが、創作の主流とされてきたのです。このような背景を持つ韓国では、近年、ハン・ガン作家をはじめとする女性作家の小説が世界的に人気を博しており、その文学的実力は国際的に高く評価されています。これは、歴史的に培われた「文」の力と、女性脚本家・作家たちのたゆまぬ努力が結実した象徴的な出来事と言えるでしょう。

結論

Netflixシリーズ『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』の成功は、単に魅力的なストーリーだけでなく、韓国ドラマが誇る脚本家の卓越した力量と、それを育んできた文化的・歴史的な土壌を深く物語っています。徒弟制度の中で経験を積んだ女性脚本家たちの活躍、そして「文を尊ぶ国」としての韓国の伝統が、今日の世界的評価を得る文学作品や映像作品を生み出しているのです。これらの要素が複雑に絡み合い、韓国のコンテンツ産業は今後も世界中で大きな影響を与え続けることでしょう。


参考文献